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<東北の本棚>生き残るすべ あれこれ

◎植物のたくらみ 香りと色の植物学 有村源一郎、西原昌宏 著

 虫や動物を呼び寄せる鮮やかな花の色や果物の香り。人間と違い言葉や移動手段を持たない植物は、香りと色を駆使して外敵から身を守り、子孫を残してきた。本著は植物が生き残りのために身に付けた力を分かりやすく伝える。
 植物は、動物や昆虫に花粉や種子の存在を知らせるだけでなく、外敵と闘うためにも香りを用いてきた。害虫に食べられた時に植物が出す特別なにおいは、害虫の天敵を呼び寄せる成分を含むという。においを感知した周辺の植物も防御力を高め、害虫に備える。これは「植物間コミュニケーション」と呼ばれる。
 植物の色は、フラボノイドなどの色素で構成される。環境に応じて複数の色素が絶妙に配合され、虫や動物を引きつける色彩になる。抗菌作用や抗酸化作用を持つことから、医療や食の分野での利用が進んでいる。
 一例として挙げるのが、バラの香りの研究だ。香水や虫よけ剤として利用される成分「ゲラニオール」はがんの進行を抑え、著者たちも実験でその効果を確認したという。「生命現象の新しい発見をしたときが最も心躍る」と後書きに記した通り、研究への情熱が伝わってくる良書だ。著者の一人である西原氏は、岩手生物工学研究センター(北上市)で研究部長を務める。
 べレ出版03(5225)4790=1620円。


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2018年07月29日日曜日


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