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<東北の本棚>日々の苦難 懸命に前へ

◎てんかんの天使たち 海野美千代 編

 決して特殊な病気ではないのに、いまだ周囲の偏見にさらされ、苦しみや葛藤を抱えるてんかん患者は少なくない。本書は岩沼市のてんかん専門病院「ベーテル」に通う患者や家族、医療スタッフらの手記をまとめた第2弾。実名を出してつぶさに語る闘病の記憶、懸命に前を向こうとする姿に胸が締め付けられる。編者はべーテルの看護師で医療相談機関「カーレ仙台」代表を務める。
 ある女性は、立て続けに起きた発作で16歳までの記憶の大部分をなくした。学校では勉強についていけず、多くの友達も失った。だが、周囲の支えが苦しみを救った。毎日登校に付き添ってくれた母、頭痛で苦しむ自分に涙を流す妹、下校中に倒れると走って先生を呼んでくれた友達。「『ありがとう』以外の言葉が見つかりません」「日々忘れがちな命の価値を、てんかんは私に教えてくれました」とつづる。
 別の女性は子どもの頃、病気を友人に知られるのが怖かった。高校に入って先生に打ち明けると「それをあなたの友達に話したら、友達との関係が変わるのですか」と問われ、答えに詰まった。「答えが出ないことが、私の答えであることに気付いた」その瞬間から、病気を隠すことはなくなったと振り返る。
 服薬を忘れて自動車事故を起こしてしまった男性は、発作を持つ患者として軽率で、自覚が足りなかったと悔やむ。自身の体調を管理する「義務と責任」を痛切にかみしめる。
 1992年、民間では全国初のてんかん専門病院ベーテルを開設した曽我孝志医師は、ひっそりと生きているかに見えた当事者が自ら声を上げる「Speak Out」をこう受け止める。「メッセージは、たった一つしかない、天使からの贈り物だ。贈り物に気付ける感性を磨ければそれでよい」と。そして「てんかんは共に歩むてんかん市民を必要とする」と記す。
 べーテル舎0223(24)1362=1944円。


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2018年07月29日日曜日


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