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<除染土再利用 原発被災地の行方>(中)風評懸念受け計画頓挫

飼料用稲の水田を見詰める高宮さん。実証事業に伴う風評被害に神経をとがらせる=二本松市

 東京電力福島第1原発事故で発生した除染土を再利用する実証事業が、福島県内で計画・実施されている。環境省は安全性を確認した上で公共事業に活用し、将来の最終処分の減量につなげたい考えだ。実証事業を巡り、地域は期待と不安、反発が交錯する。三つの地域を取材した。(福島第1原発事故取材班)

◎道路盛り土に活用(二本松)

 東京電力福島第1原発事故で発生した除染土を再利用する環境省の実証事業は計画通りに進んでいない。

<不十分な説明>
 二本松市原セ(はらせ)地区。田園地帯を走る市道の改良工事に伴う盛り土として、市内で出た除染土約500立方メートルを使う計画が、地元農家などの反対で頓挫した。
 環境省は5月中旬に予定していた測量調査を断念。6月28日付で「本年度の事業計画を再検討する」との文書を地区全戸に配った。
 「なぜ、原セ地区なのか。私たち住民に対し、納得のいく説明がなかったことが大きい」。地元農家の高宮文作さん(62)は語る。
 高宮さんは実証事業が計画された地区内の60アールで飼料用稲を栽培。他の農家47戸と共に、約5キロ離れた飼料生産組合に納めてきた。
 ところが、組合から飼料を購入してきた福島県内の畜産農家が5月上旬、「原セの稲を使う飼料は要らない」と伝えてきた。実証事業が理由だった。
 間もなくあった環境省主催の住民説明会。高宮さんは「もう実害が出ている」と風評被害を訴えた。
 同省の担当者は「情報公開を徹底する」「東京で農産物のPRイベントを開く」と話したが、住民側は「説明は不十分」と感じた。「事実上の最終処分につながる」と、再利用そのものを問う声も上がった。

<国側に丸投げ>
 説明が足りないのは環境省に限らない。
 除染土を使うのは市道の改良工事。再利用の候補地として原セ地区を国側に紹介したのも市だった。
 にもかかわらず、市は「事業主体はあくまで環境省」と、距離を置き続けた。4度の説明会は同省や地元住民主催だった。
 高宮さんは「住民側に立つべき地元自治体の姿が見えなかった。市が説明責任を国に丸投げしたようになったことで、不信感が広がった」と指摘する。
 環境省は計画頓挫に戸惑いを隠さない。利用を想定していた除染土の放射性物質濃度は1キログラム当たり1000ベクレル台。再利用基準(8000ベクレル)を大きく下回り、同省幹部は「これほどの反発は意外だった」と語る。

<余波収まらず>
 県内の農家は原発事故後、農産物や原乳の出荷停止、取引価格の低下などに直面してきた。理屈や数字では解決しない風評におびえてきた生産現場の不安にまで、国や地元自治体が思い至ったのかどうか。
 事業計画が来年度以降に延期された地元では、余波が消えていない。行政区の関係者の一人は飼料組合のある地区名を挙げて「向こうが騒いだために風評が起こった」と決め付けた。
 稲と堆肥をやりとりしてきた耕畜連携も、揺らぐ恐れが出ている。


2018年08月04日土曜日


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