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<検証・在宅被災者>(下)健康不安/カビ 傾き そのままに

震災後にカビが生え、薄い青色から灰色に変わった壁。菱沼ミネさんはせきやめまいに悩まされた

 東日本大震災で甚大な津波被害を受けた石巻市で、今なお進行する被災に苦しむ人々がいる。十分な支援を得られないまま、損壊した自宅に住み続ける在宅被災者だ。震災から7年5カ月。家屋の劣化、生活困窮、健康悪化など負の連鎖が止まらない被災地の現実を見る。
(石巻総局・氏家清志)

 たんすの奥からキノコが生える。薄い青色だった壁はカビで一面灰色に。東日本大震災で損壊した家屋に住み続ける在宅被災者たちに健康不安が募る。

<修繕費足りず>
 石巻市湊御所入の木造2階の住宅に住む菱沼光雄さん(83)ミネさん(81)夫妻。震災の揺れで2階の外壁が一部壊れた。津波は1階の床上約30センチまで浸水。水は2日間引かなかった。
 震災から約半年後、1階の寝室の壁が黒カビで覆われ、灰色に変色した。1年後には、海水を洗い流し乾燥剤を入れたたんすの衣類に白カビが発生。たんすの奥にキノコが生えていた。
 ミネさんにせきやめまいの症状が現れたのはその頃だった。光雄さんもたんが絡むようになった。
 自宅は大規模半壊と判定された。国と市の助成制度を利用し、約300万円をかけて居間や外壁を修繕した。資金が足りず、寝室は手付かずのまま。ミネさんは「お金があれば直したいが、老い先を考えると…」と諦めた様子で話した。
 「登山をしている感覚になる。直すには何百万円とかかりそうだ」。同市吉野町の学習塾経営遠藤州基さん(48)は、地震で生じた家の傾きに頭を痛める。
 在宅被災者を支援する一般社団法人チーム王冠(石巻市)や仙台弁護士会は4月、遠藤さん宅を調査した。1級建築士平山建治さん(多賀城市)が測ると、一部で「1000分の24」の傾きが認められた。
 平山さんは「施工ミスの上に地震や地盤沈下があっても許容範囲は1000分の6(長さ10メートルにつき6センチ)。通常は考えられない極端な傾きだ」と驚き、健康への影響を危惧する。

<声上げづらく>
 仙台弁護士会の内田正之弁護士は「住環境が不十分な状態が続けば健康問題が出てきてもおかしくない」と指摘。「住居を失った被災者が多い中、(遠慮して)声を上げづらい在宅被災者の問題は顕在化しにくい」と警鐘を鳴らす。
 災害救助法に基づく応急修理制度(震災発生当時の上限52万円)の利用世帯は市内で1万632世帯に上る。これに対し、市が2013年に創設した生活再建事業(上限100万円)は5331世帯(6月末現在)。
 チーム王冠は国と市の制度の利用世帯数の差を基に、応急修理にとどまっている世帯数は約5000と推測。伊藤健哉代表理事は「修繕が完了していない被災家屋は多い。理由や状況を確認すべきだ」と早急な市の対応を促す。
 一方、市生活再建支援課の三浦義彦課長は「把握は難しいが、劣悪な住宅で暮らす世帯数は肌感覚では100ぐらい」と説明。本年度導入した小規模補修補助金制度を挙げ「まずは損壊部分を修理できる家屋を増やし、結果的に在宅被災者を減らしたい」と話した。
 声を上げない在宅被災者たち。全容が捉えられないまま、暮らしの復興が置き去りにされていく。


2018年08月06日月曜日


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