広域のニュース

<検証・在宅被災者>生活再建へ支援拡充を 神戸大名誉教授・塩崎賢明氏に聞く

家屋を補修する支援金増額の必要性を強調する塩崎氏

 東日本大震災で顕在化した在宅被災者の課題は、西日本豪雨や想定される首都直下地震、南海トラフ巨大地震でも浮上する恐れがある。現行の支援制度に死角はないか。災害復興に詳しい塩崎賢明神戸大名誉教授に聞いた。(聞き手は石巻総局・氏家清志)

◎神戸大名誉教授 塩崎賢明氏に聞く

<進む生活破壊> 
 −震災から8年目に入り、被災地では在宅被災者の問題が深刻化している。
 「制度の条件に当てはまる人に決められた支援だけをやっている。少しでも要件から外れると対象外になり、制度のはざまに落ちてしまう。時間がたつにつれ災いが追い掛けてくる『復興災害』の典型だ」

 −石巻市の場合、被災家屋を補修する支援額は国と市を合わせ最大約250万円になる。
 「全く足りない。最低でも500万円ぐらいにしないと住宅再建の役に立たず、ずるずると(生活の)破壊が進む。国の加算支援金は補修に十分なのか、きちんと検証すべきだ。1000万円あれば大半の問題は解決する。半壊以下は対象外ということも問題だ」

<コスト圧縮も> 
 −個人資産に公金を充てることへの批判から、支援金増額には反対も根強い。
 「2000年の鳥取西部地震で、鳥取県が新築に300万円、補修に150万円の独自補助をした。当時の片山善博知事は『村に家がなくなれば村がなくなる』との考えだった。地域に家があり、人が住み、さまざまな活動が行われることには公共性がある」
 「仮設住宅と災害公営住宅にかかる行政コストは1世帯当たり計約2400万円。支援金を出して自力再建ができればコストは約740万円で済むという試算がある。国や自治体の業務もかなり少なくなる」

 −国の住宅支援政策は避難所、仮設住宅、災害公営住宅という「単線型」の支援だったといわれる。
 「仮設住宅は災害救助法、災害公営住宅は公営住宅法で規定される。支援金は内閣府。縦割りでばらばらだ。どんな制度でも生活再建をトータルに描けなければ意味がない」

 −32兆円の復興財源が確保されたが、被災者に直接届く額は限られている。
 「17年末までに、加算支援金など生活再建支援金は19万7000世帯に計3448億円が支給された。この額が2、3倍になってもいい。1世帯当たりの支援金を(現行の上限300万円から)600万円にしても総額は6000億円だ」

<個別対応必要> 
 −西日本豪雨でも在宅被災者が出る可能性がある。
 「被災家屋に対する支援制度が変わらなければ膨大に発生する。熊本地震や岩手県岩泉町の豪雨災害でも顕在化した。非常に危機感を持っている」

 −在宅被災者の問題にどう対応すべきか。
 「まずは全体像を把握する必要がある。個別状況を把握し、問題解決の手段をケースワーカー的に検討すべきだ。個々の被害に対応できる制度に変えることが重要になる。大規模災害にどう臨むかを考える『防災復興省』の検討も必要だろう」

[しおざき・よしみつ]京大大学院工学研究科修了。神戸大教授、立命館大特別招聘(しょうへい)教授を退職後、立命館大災害復興支援室アドバイザー。兵庫県震災復興研究センター共同代表理事や大船渡市復興計画推進委員長も務める。専門は住宅政策。70歳。川崎市出身。


2018年08月07日火曜日


先頭に戻る