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<コメ流通の変 減反廃止元年>(下)総高級化/輸出拡大 価格戦略が鍵

大規模生産には不向きな中山間地域で、農薬も肥料も使わずに玄米食用のコメを生産する出口社長=7月、長野県伊那市

 業務用米など値頃感のあるコメが不足している。国による生産調整(減反)が2018年産から廃止され、コメの生産量や価格の先行きは見えにくい。生産現場と同様に、加工食品メーカーや外食産業、輸出業者も知恵を巡らし、対応を模索する。(東京支社・小木曽崇)

<玄米人気に着目>
 ダムを望む棚田で稲穂が揺れる。7月中旬、南アルプスと中央アルプスに囲まれた長野県伊那市。
 「かつては耕作放棄地だったので環境汚染がなく、生産力は高い。宝の山だ」
 国産米の海外販売に取り組むWakka Japan(札幌市)の出口友洋社長は、コメの大規模生産に不向きな中山間地域が持つ可能性をこう強調した。
 同社は北海道や山形県で仕入れたコメをハワイや香港、シンガポール、台湾の店舗で精米し、現地の飲食店や個人に販売する。
 ハワイでは白米と同じぐらい玄米食が浸透している点に着目。昨年、胚芽の大きさが通常の3倍で玄米食に適した「カミアカリ」の生産に乗り出した。伊那市はその拠点だ。
 狙いは当たった。ハワイの店舗で取り扱うコメのうち、最高値の1キロ2000円程度で販売したが、300キロを完売した。

<付加価値売りに>
 食味の優れた国産米を最良の状態で提供しようと、2009年に起業した。ここに来て、海外ニーズと国内生産事情のミスマッチに直面している。
 「車に例えると、国産米は高級志向のレクサスばかり。水素自動車のように機能性に特化したコメがあれば、販売のバリエーションは増える」。海外向けならではの付加価値を売りにしたコメ生産に参入した理由を語る。
 今年6月までの1年間の国産米の国内需要は740万トン。前年比で14万トン減り、今後も年間8万トンずつ減少する見込みだ。
 政府が消費のフロンティアとして熱視線を送るのが、人口増と和食ブームで需要が伸びる海外。コメと日本酒などを含めた加工品の輸出目標を19年に600億円、10万トンと設定し指定業者や輸出基地を支援する。
 「Wakka」もそのうちの一社だが、出口社長はコメの輸出数量が先行して伸びる現状に違和感を覚えるという。
 記録が残る10年と比較すると、17年の輸出数量は約1万1800トンで6.24倍となった。一方、輸出額は約32億円で4.63倍にとどまった。

<値引き競争 懸念>
 出口社長は「価格を落とし、量を増やしている側面がある」と指摘。コシヒカリ、ゆめぴりかといった「レクサス」までもが、値引きせざるを得ない現状に危機感を抱く。
 値引き競争に陥らず量、価格ともに伸ばすには何をすべきか。
 出口社長は「高い国産米を買えない外国人向けに、安くて食味の良い軽自動車のようなコメを作りたい。メード・イン・ジャパンの品質を知れば、きっと最高級品種も試したくなるはずだ」と戦略的な価格設定の必要性を説く。
 国産米初心者向けの銘柄で裾野を広げ、高価格帯の売り込みにつなげる。自社と国産米市場の成長を重ね合わせた青写真を描く。


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2018年08月10日金曜日


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