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<東日本大震災>被災寺院、再建への苦悩(上)檀家離散、資金が壁に

ようやく再建にこぎ着けた本堂の建設現場に立ち、被災から7年5カ月の苦労を振り返る早坂さん=2日、宮城県山元町

 東日本大震災と東京電力福島第1原発事故の発生から、間もなく8度目のお盆を迎える。被災地の寺院の多くは今も、資金難や檀家離散などの課題を抱えている。避難の長期化で再建の見通しすら立てられずにいるケースも少なくない。

 津波で全壊した寺の柱や屋根を組む作業が、炎天下で続く。震災から7年5カ月近くを経て、本堂の着工までたどり着いた。
 宮城県山元町の徳泉寺住職早坂文明さん(67)は今月上旬、「多くの人の支援でようやくここまで来た」と話し、建設現場を眺めながら苦労をかみしめた。

<公的支援なし>
 道のりは手探りの連続だった。地域一帯が被災し、町内外に離散した檀家に寄付を求めることは難しい。住職を務める町内陸部の別の寺を拠点に、2012年から願いを込めたはがきによる「一文字写経」を全国に呼び掛け、納経料として再建の資金を募った。
 「地域の核となっていた寺を復活させたい、との思いだった」と早坂さん。檀家の結束は強く、被災で住まいが分散した今も、班をつくって葬儀などを支え合う。檀家で組織する護持会会長の嶋田博美さん(68)も「寺は古里の唯一の証しになる」と再生を願う。
 建物は来春ごろに完成する見通しだが、憲法の政教分離規定で国や自治体からの支援は得られなかった。早坂さんは「寺は地域コミュニティーを下支えしている。今後の大規模災害に向け、公的支援の在り方は大きな課題だ」と訴える。
 岩手、宮城両県の津波被災地では、いまだに多数の寺が再建の課題に直面する。曹洞宗の各県宗務所などによると、宮城県沿岸部で全壊した32の寺のうち、10カ所以上が本格再建に至っていない。岩手県では6カ所が全壊し、多くが現在も仮設施設などのままだ。
 資金難や住民の離散に加え、住居新築を制限する災害危険区域の指定に伴い、沿岸部では再建用地の確保が難しくなっている。宮城県宗務所所長の小野崎秀通さん(70)は「以前からの人口減少に震災が重なり、7年を経てもなお厳しい状況にある」と説明する。

<つながり模索>
 再建を果たした寺も、環境の変化に合わせ、模索を余儀なくされている。
 「再出発はこれからが正念場」。仙台市若林区荒浜地区にあった寺が全壊し、約2キロ内陸側に昨年移転した浄土寺の住職中沢秀宣さん(69)は、新天地での1年余りを振り返り、気を引き締める。
 津波で140人近くの檀家が亡くなった。周辺は災害危険区域となり、多くが地区外に移った。寺と地域が一体だった震災前は、商店や郵便局なども近く、気軽に住民が立ち寄った。現在、徒歩圏内に住む檀家は少なく、恒例行事の「念仏講」も再開できていない。
 中沢さんは「檀家の多くはローンの支払いや生活再建に追われ、仏壇の用意など落ち着いて先祖の供養ができていない人もいる」と指摘。「高齢化や世代交代も進む中、つながりをどう維持していったらいいのか」と手探りを続ける。(報道部・菊池春子)


2018年08月11日土曜日


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