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<東日本大震災>被災寺院、再建への苦悩(下)遠のく町民 揺らぐ縁

施餓鬼に集まった檀信徒に法話をする妙勝寺住職の瀬戸さん。寺の姿勢を見せる大事な場とも考えている=9日、いわき市

 東京電力福島第1原発事故に伴う帰還困難区域に将来、どれだけの人が戻るのか。見通しは立たず、地域の寺の苦悩は深い。
 全域避難が続く福島県双葉町の妙勝寺は2013年4月から、いわき市の民間霊園に布教所を置く。台風13号が接近した今月9日、施餓鬼(せがき)を行った。
 県内外に暮らす檀信徒約50人が集まった。「寺は心のよりどころ。不安を振り払おう、ご先祖を守ってもらおうと皆来ている」と檀家(だんか)総代の一人が語った。
 避難先は関東、東北とばらばら。葬儀や法事の7割は住職の瀬戸隆寿さん(42)が避難先に出向く。車の年間走行距離は3万キロだ。
 当初は、町民の3分の1が避難する同市での寺院再建を検討したが、資金など条件が整わず断念。昨年、帰還困難区域に再び住めるようにする「特定復興再生拠点区域」(復興拠点)の枠組みができ、将来像がおぼろげながら見え始めた。

<帰還意向11%>
 復興拠点では、国が除染やインフラ整備を集中的に進める。町は計画で22年春ごろの居住開始を目指す。寺も区域に入った。
 「今は双葉での再建が唯一の選択肢だが、本格的に本堂を建て替えるのは難しい」と瀬戸さん。残っている本堂を直すか、シンボルのような小さいお堂に建て替えるのか。檀家と相談し決めるという。
 ただ、肝心の町民帰還が進むとは考えにくい。復興庁などによる昨年度の町民意向調査で「戻りたい」は11.7%。いわき市に布教所を置いたまま町内に通うことを想定する。 避難先で住宅を確保する町民が増えた。仏壇を町内から新居に移す法要の依頼は14年ごろに始まり、16年にピークとなった。並行して墓を町外に移す法要も増加した。
 避難先の寺に移るなどして離檀したのは、檀家約180のうち約2割に上る。
 「遠くに避難した檀信徒との縁が子や孫の代まで続くかどうか。安心して任せてもらえるよう、どこへでも出向き、やる気を見せていく」。瀬戸さんの危機感は強い。

<対話小まめに>
 同様に全町避難する福島県大熊町の遍照寺は、福島第1原発から30キロ圏の同県広野町での本格再建を決断した。
 当初借りた会津若松市の寺から16年春、広野町に移転。仮の寺を置いて墓地を整備した。新たに広い土地を近くに求め、本堂などの再建準備に入った。
 遍照寺は原発から南に約4キロ。除染廃棄物の中間貯蔵施設の予定地となった。住職の半谷隆信さん(67)は「放射線量が高く、帰れないと思っていた。それが、30年間使われる中間貯蔵施設の建設で決定的になった」と言う。
 原発事故前、600軒ほどの檀家の大半は寺の半径10キロ内に住んでいた。広野町に移った今は周辺に10軒ほど。檀家個人とつながる必要性が強まったと感じる。
 半谷さんは「1軒ずつ回って話をしている。コミュニケーションは以前より取れている。関係をより充実させたい」と語る。
(いわき支局・佐藤崇)


2018年08月12日日曜日


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