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<東京検分録>自民総裁選/復興政策の実直な議論を

 9月の自民党総裁選は、安倍晋三首相(党総裁)と石破茂元幹事長の一騎打ちとなる公算が大きくなった。東日本大震災後の2012年秋以来、6年ぶりの論戦だ。震災復興、東京電力福島第1原発事故からの再生はどう語られるのか。その側面から事実上の首相選びを注視したい。
 石破氏は立候補を表明した10日の記者会見で震災復興に触れ「被災者の仕事や住まいなど課題はいまだ多い。現場の方々が今なお何に苦しんでいるのか把握し対応する」と強調した。
 7月末、自民、公明両党は復興に関する第7次提言を首相に提出した。柱の一つは、20年度末で廃止される復興庁の後継組織に関する本格検討だ。
 首相は「被災者が安心して復興に取り組めるよう、自分たちの未来を生き抜いていけるよう全力を尽くしたい」と述べた。
 2人には言葉通りの復興政策を掲げてもらい、今後の防災を含めて丁々発止の議論を望みたい。
 というのも、首相が無投票再選された15年の総裁選以降、政権の被災地に対する姿勢が波紋を広げたことがあったからだ。
 17年4月、当時の今村雅弘復興相は「(震災被害が)まだ東北であっちの方だったから良かった」と述べた。復興相ポストの失態は過去にもあったが、1強のおごりが極まった発言だ。
 今村氏の後任となった吉野正芳氏(衆院福島5区)の最初の仕事は「おわび行脚」だった。盛岡勤務時代、岩手県庁を訪れた吉野氏を取材した。表情は硬く、達増拓也知事らに腰を90度に曲げておじぎした。
 復興庁担当になり、週2回の閣議後記者会見を取材する。質問に答える際に秘書官からメモが渡されるが、吉野氏は見ないことが多い。特に地元の福島の話題になると、ペーパーに目を落とさずに持論を語る。
 吉野氏をたたえたいのではない。そうした謙虚、実直な姿勢が1強政権内で共有されず、むしろ欠けている点を強調したい。権力にへつらう忖度(そんたく)が横行し、政治への信頼が損なわれたことは目に余る。
 党内では早くも総裁選後の内閣改造や党人事が取り沙汰されているという。復興庁の廃止まで2年半となった時点での総裁選。復興の方向性を激論する場があるべきだ。(東京支社・山形聡子)


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2018年08月12日日曜日


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