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<転機の米作り だて正夢、市場へ>(上)生産管理/品質維持へ手探り続く

農試の担当者(中央)らとだて正夢の生育状況を調べる森合さん(右)=8月上旬、宮城県大郷町土橋地区

 宮城県が開発に取り組んだ高価格帯ブランド米「だて正夢」の本格デビューが今秋に迫る。ライバル産地が次々に新品種を市場投入し、競争が激化する中、米どころの復権と威信を懸けて臨む新品種。デビュー前夜の生産、販売などの現場を追う。(報道部・馬場崇)

<深水・落水徹底>
 記録的猛暑が「初陣」の前に立ちはだかる。
 宮城県中央部の大郷町土橋地区。吉田川沿いに広がる森合久則さん(68)の水田で8月上旬、だて正夢の出穂状況を県古川農業試験場の担当者が調査した。
 県内は7月中旬から連日気温30度を超す。一転、調査の前夜は停滞した前線の影響で大雨だった。森合さんは「高温か、やっと降ったと思えば大雨。何とかならないものか」と恨めしそうに空を見上げた。
 だて正夢はもちもちした食感が特徴で、タンパク質が少ない低アミロース米。登熟(もみの実入り)の時期に高温が続くとアミロース含有量がさらに低下し、米粒が白く濁ったりもち米に近づいたりし、もち臭が強くなるといった品質低下につながる。
 「『昼間深水・夜間落水』の徹底を」。県が7月末に開いた県米づくり推進本部の高温・少雨対策会議で、担当者が生産者サイドに向けて呼び掛けた。晴天の高温時は田んぼに深く水を張り、夜はぬるくなった水を落とす管理法だ。
 県農産環境課の千葉啓嗣技術補佐は「だて正夢に高温は大敵。田んぼに水を流しかけるだけでも違う。水管理の徹底が品質の鍵を握る」と強調した。

<「追肥」を推進>
 だて正夢は決して栽培が容易な品種ではない。県は生産者の登録制を導入。18年産は384人が登録し、栽培管理の徹底を図っている。ポイントの一つが、成長期に肥料を分けて与える「追肥」だ。
 だて正夢は主力品種「ひとめぼれ」と比べ、粒が小さい。玄米1000粒当たりの重さはひとめぼれの約22グラムに対し約20グラム。県は収穫後の玄米選別で、ひとめぼれと同じ1.9ミリの目幅のふるいを使うことを生産者に求めるが「要求される粒の大きさになかなか届かない」(2017年産を栽培した県北部の農家)難しさがある。
 「肥料を抑えるとコメがやせ、粒が小さくなる」と古川農試の大川茂範副主任研究員。「長らく主力だったササニシキは追肥をすると食味が落ち、ご法度だった。県内のコメ農家には追肥の習慣があまりない」とも言う。

<刈り遅れ懸念>
 他品種より草丈が高い時期が長く、葉の緑色が濃い品種特性もあり「従来の品種に慣れていると刈り遅れになる恐れがある」(大川副主任研究員)。品質維持には適期刈り取りの重要性も増す。
 市場で人気がある低アミロースの銘柄米が空白域だった宮城。期待を集める新品種の出来秋に向け、生産現場の試行錯誤が続いている。


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2018年08月17日金曜日


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