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<ニュース深掘り>秋田新幹線新ルート整備 防災強化へ議論不可欠

赤渕駅の踏切付近を走る秋田新幹線。険しい山岳地帯を走るため、道路に面しているのはわずかな区間だ=7月、岩手県雫石町

 JR東日本が秋田新幹線の岩手、秋田県境に新ルート整備を検討していることが6月に表面化した。対象の区間は険しい山中に旧国鉄時代の古い橋が集中するなど防災面の課題を抱えるが、対策にかかるコストについてJR東と市民、地元側との認識の差は大きい。インターネット上では「7分間の時間短縮のために700億円もかけるのか」との懐疑論も出る中、整備の必要性に関する議論を深めてほしい。

 7月下旬、検討区間の付近を車で走った。田沢湖駅(仙北市)を出ると、すぐ山岳地帯に入る。急カーブの峠越えで知られる国道46号から、新幹線の赤い車体が谷底を縫うように走行する姿が見えた。
 赤渕駅(岩手県雫石町)までの18.1キロには24本の橋と大小13のトンネルがあり、1966年に全通した田沢湖線を長く支える。耐震補強工事の看板を頼りに橋の一つ「大地沢橋梁(きょうりょう)」を探してみたが、山中を行けどもたどり着けず、地形の険しさを実感した。
 この区間の新幹線運行は不安定さがつきまとう。2013年8月の豪雨で盛り土が崩壊し、補修で3日間の運休を強いられた。冬場は降雪に伴い徐行運転となることが多い。単線のため上下線の擦れ違いで遅れが拡大する。盛岡駅で東北新幹線に接続しており、秋田新幹線の運行の乱れが全体に波及しかねない。
 JR東東北工事事務所の資料によると、盛岡−秋田間の降雨防災強化対策として02〜07年度に年平均7億円が投じられた。老朽化した県境の橋全てを架け替える場合、仮設橋建設などに約120億円が必要との試算もある。
 新ルートは県境区間の8割超を別の単線トンネルに切り替え、なるべく橋を通らない形で検討されている。災害に強く、補修費も大幅に減らせる抜本的な対策となり得る。JR東の幹部は「整備目的はずっと変わらず、災害対策は長年の課題だった。時間短縮は副産物にすぎない」と強調する。
 JR東の深沢祐二社長が6月5日の定例記者会見で整備推進に意欲を示し、秋田県内で早期実現への期待感が高まった。秋田新幹線より5年早い1992年に開業し、同様の新ルート整備構想がある山形新幹線を引き合いに「ついに山形を逆転した」と喜ぶ秋田県職員OBもいるという。
 だが、JR側の事情や狙いは地元側に十分伝わっていない。

 秋田県議会6月定例会では新ルート整備に関する質問が出たが、「報道は本当か」「(別に要望してきた)奥羽・羽越新幹線の整備はどうなるのか」と表面的なやりとりに終始した。
 地元側からは多額の事業負担に対し、慎重な声が相次ぐ。秋田県や関係自治体は「なるべく負担がないように国からの支援を」(佐竹敬久知事)との姿勢が目立ち、「自らの財布を開けても」という積極性はない。JR東は「地元には応分の負担をお願いしたい」との考えを示しており、認識に開きがある。
 7月の西日本豪雨では多くの鉄道路線が被災した。新ルート整備の「本質」といえる防災対策の強化は待ったなしの状況だ。本来の事業目的に目を向け、熟議を重ねてほしい。(秋田総局・橋本俊)

[秋田新幹線新ルート整備]防災対策や安定運行を目的にJR東日本が事業化を検討している。対象区間は秋田新幹線が走行する田沢湖線赤渕−田沢湖間の18.1キロ。現在の仙岩トンネル(3.9キロ)とは別に全長10キロ以上で直線的な単線トンネルを整備する。概算事業費は700億円で工期は10年程度。秋田−東京間が7分短縮され、3時間半程度となる見通し。


関連ページ: 秋田 経済

2018年08月20日月曜日


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