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<「いのぐ」プロジェクト>「被災地に学べ」高知と宮城、交流継続 大川小視察や語り部招待

大川小を訪れ、永沼さん(右端)の話に聞き入る高知県の中学生=4日午前、石巻市
土佐清水市であった「いのぐ塾」で講演する鈴木さん=6月15日(高知新聞提供)

 東日本大震災を教訓に南海トラフ巨大地震への備えを進めようと、高知新聞社(高知市)が派遣する中学生記者の一行が震災被災地を訪れた。河北新報社と協力して取り組む防災プロジェクト「いのぐ」(「いのぐ」は地元の方言で「生き延びる」の意味)の一環。被災者を語り部として高知に招いて語り合うワークショップも継続開催し、被災地との交流を通じた防災啓発に力を入れている。
 中学生記者の派遣は2016年に始まった。昨年は熊本地震の被災地を巡り、宮城入りは2回目。今年は高知県内の中学2、3年の男女計6人が2〜4日、仙台、石巻などを視察した。
 最終日の4日は児童と教職員計84人が犠牲になった石巻市大川小を訪れ、同小卒業生の東北福祉大2年永沼悠斗さん(23)=大川伝承の会=から話を聞いた。
 ねじ曲がった柱や外壁がなくなった教室などを見て回ると、言葉少なに。弟=当時(8)=を亡くした永沼さんは「校庭で野球をしたのが一番の思い出。地域に見守られた学校だった。災害はどこでも起こる。被災地で学んだことを、命を守る取り組みに生かしてほしい」と訴えた。
 永沼さんがメンバーとして活動する「『記憶の街』模型復元プロジェクトin大川」の模型も見学。南国市香南中3年穂岐山(ほきやま)陽(ひなた)さん(15)は「(大川小では)当たり前の楽しい日常が一瞬でなくなってしまったんだ」と津波の恐ろしさを実感した様子だった。中学生記者たちは高知新聞紙上で、視察の成果をまとめる。
 高知新聞社は中学生記者の派遣とは別に、河北新報社の「むすび塾」を参考に始めた防災ワークショップ「いのぐ塾」を16年から定期開催している。
 今年6月に土佐清水市で開催した6回目のいのぐ塾には、宮城県女川町で被災した仙台市在住の東北福祉大1年鈴木智博さん(19)を語り部として招いた。
 鈴木さんは地元中学生と保護者ら約260人を前に講演。震災で母親と祖父母を亡くした体験を踏まえ「皆さんには私と同じ思いをしてほしくない。呼吸をするように防災のことを考えたり避難ができたりすれば、犠牲者を出さないで済む」と強く呼び掛けた。
 いのぐプロジェクトの事務局を担当する高知新聞社総合企画室の川戸未知氏は「南海トラフ巨大地震が懸念される中、防災啓発活動は地元紙の責務」と意義を強調。「今後も河北新報社と協力し、特に子どもたちへの防災教育を積極的に進めたい」と力を込める。


2018年08月20日月曜日


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