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<チャイム再び 福島・富岡小中の1学期>(4完)ウエルカム/出会いの場 成長促す

林さん(右端)の匠の技に子どもたちは目を見張った=7月5日、福島県富岡町

<匠の技間近で>
 夏休みが近づいた7月5日、福島県富岡町の富岡小中学校に、大工の棟梁(とうりょう)が初めてやって来た。
 岡山県の林敬庸(たかつね)さん(42)。町教委の依頼で、月1回のペースで通うことになった「プロフェッショナル転校生」だ。
 子どもたちに「これからは『親方』と呼ぶように。君たちはきょうから私の弟子です」とあいさつした。
 親方は11月ごろの完成を目指し、児童生徒と長さ約8メートルのテーブル作りに取り組む。材料は樹齢350年の松の製材。東日本大震災前の台風で倒れるまで、町内に立っていた。
 町内の山林は東京電力福島第1原発事故で立ち入りできず、子どもたちが木に触れる機会は少ない。そこに、のこぎり、かんなを鮮やかに扱う「匠(たくみ)の技」だ。子どもたちの目は生き生きと輝いた。

<「シンボルに」>
 「大工仕事を間近に見られて楽しい。みんなで囲めるでっかいテーブルを作る」と6年南宇宙(  そら  )君(11)。親方は「テーブルが学校再スタートのシンボルになるように手助けをしたい」と約束した。
 小中学生計17人。学校は少ない子どもたちに、数多くの出会いを提供したいと考えている。保護者、地域住民、外部関係者のいずれもウエルカムだ。
 親方の初登校から1週間後、小学1.2年生の学習発表会があった。朗読や劇の披露に、町民や保護者が目を細めた。
 1年三国優君(6)の母桜さん(31)は、1学期だけで何度も学校に足を運んでいる。夫の仕事で今春、仙台市から引っ越した。
 優君は第1子。仙台の事情はよく分からないが、「しょっちゅう様子を見に来られるのは、ここならでは」。多くの大人と接している優君に「目上の人との話し方が身に付いてきた」と成長を感じている。

<安全面も配慮>
 学校と地域をつなぐ5人のコーディネーターの存在も大きい。学校1階ホールで町民対象の手芸教室を企画。児童向けには朗読や劇を指導する「表現塾」を校舎内で開催している。
 本田祥之(よしゆき)さん(21)の勤務は最も多い週4日。声優志望なので、朗読などはお手の物だ。
 福島県小野町出身。専門学校時代、被災地を知る活動に参加し、富岡町とのつながりができた。「子どもも地域の方も、みんなが笑顔になれる学校にしたい」と、にこやかに語る。
 「尊敬できたり、時にはくだけた様子を見せたり…。多様な大人たちの姿と接することは、子どもたちに有意義」と中学校の中潟宏昭校長(53)。ただ、町民らが自然と校門をくぐる状況までにはなっておらず、もっと来校しやすい環境を整えていく方針だ。
 もちろん、敷地内にカメラを設置するなど、防犯面も重視する。6月には不審者が校内に侵入したとの想定で訓練を実施した。
 安全な環境下、大勢が関わる富岡小中学校の模索は2学期も続く。(郡山支局・岩崎かおり)


2018年08月25日土曜日


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