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<ニュース深掘り>困窮する在宅被災者 支援制度の見直し急げ

床が抜け、畳が落ちた被災家屋。津波の影響とみられる

 東日本大震災で甚大な被害を受けた石巻市で、震災から7年5カ月以上がたった今も劣悪な住環境で暮らす在宅被災者=?=がいる。取材を通じ、被災家屋の補修に対する支援制度の不備が見えてきた。首都直下地震や南海トラフ巨大地震が想定される中、制度の拡充とともに、被災者一人一人の状況に応じて再建計画を考える「災害ケースマネジメント制度」の必要性を痛感した。

 被災家屋の補修に対する助成は(1)災害救助法に基づく、半壊以上が対象の応急修理制度(上限約58万円、震災当時は52万円)(2)大規模半壊以上が対象の被災者生活再建支援制度の加算支援金(最大100万円)(3)自治体独自の支援制度−がある。応急修理制度か加算支援金を利用すると、原則として仮設住宅や災害公営住宅には入居できなくなる。
 制度の問題点は、まず複雑であることだ。石巻市を拠点に在宅被災者を支援する一般社団法人「チーム王冠」の調査では、在宅被災者の7割は高齢者だった。取材した多くの被災者が「当時は混乱していた。いまだにどんな支援策があり、自分がどれを利用したのか分からない」と話した。
 補修費の支援額も十分とは言い難い。同市では国と市の制度を合わせても最大252万円。チーム王冠によると被災家屋の平均補修額は約500万円に上る。在宅被災者は低所得者が多い。支援額を500万円以上に引き上げる検討が必要だろう。
 仮設住宅と災害公営住宅にかかる行政コストは1世帯当たり計約2400万円といわれる。自力再建を前提に住宅政策を見直せば、コストは約740万円に抑えられるとの試算もある。
 半壊以下では支援の対象外となることも問題だ。西日本豪雨などを受け、全国知事会は7月下旬、生活再建支援制度の対象拡大の検討を決めた。現行の同制度の財源は都道府県が拠出する基金と国が半額ずつ(東日本大震災では国が5分の4)負担する。
 災害復興に詳しい塩崎賢明神戸大名誉教授は「震災で活用された生活再建支援制度の総額は約3534億円で復興財源の1%程度」と指摘。「自治体の拠出金に頼らず、国が全額負担すべきだ」と強調する。
 在宅被災者は困窮や病気、介護などの問題を抱えるケースが多い。一律の損壊判定だけで被災状況を正確に把握することはできない。訪問調査で一人一人の状況を把握して再建計画を立て、その上で各分野の専門家が対応に当たる「アウトリーチ型」の災害ケースマネジメント制度が求められている。
 チーム王冠の伊藤健哉代表理事は「時間も手間もかかるが一番早く復興ができる最良の方法だ」と言う。
 近年相次ぐ災害は国に支援体制などの見直しの必要性を突き付けている。総務省は今秋、在宅被災者に関する調査に乗り出す。
 避難所から仮設住宅に移り、そして災害公営住宅に入居するという単線型の住宅支援には限界がある。今後、国はどう大規模災害の被災者と向き合っていくのか。議論の中心には、影響が現在進行形で続く東日本大震災の在宅被災者の現実を据えるべきだ。
(石巻総局・氏家清志)

[在宅被災者]大災害の直後、避難所が満杯で入れなかったり、家族に要介護者や障害者がいたりといった理由で自宅で生活を続ける被災者。東日本大震災で顕在化し、その後の熊本地震、2016年8月の台風10号豪雨の被災地でも同様のケースが発生した。これまで東日本大震災被災地では本格的な実態調査は行われておらず、被災世帯数など正確な状況は分かっていない。


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2018年08月27日月曜日


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