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<トーキンの転進 グローバル企業へ>(上)ロングテール/小口のネット販売強化

展示会でトーキンとケメットの製品を紹介する浅川取締役(手前左)=千葉市美浜区の幕張メッセ

 ITの急激な進化と普及に伴い膨張する電子部品市場。パソコンやスマートフォンなど機器製造のトーキン(宮城県白石市)が世界的好況の波に乗り、グローバル企業への転進を目指す。足掛かりとして昨年春、同社は米電子部品製造ケメットの傘下に入った。旧東北帝大の研究成果を事業化するため設立された老舗メーカーは生き残りを懸け、統合メリットを追求する。(報道部・高橋公彦)

<互いの製品紹介>
 「ようやくケメットの製品も紹介できるようになった」
 千葉市で今年4月にあった展示会で、トーキンの浅川正博取締役執行役員が電機メーカーの担当者らにケメットのキャパシタ(蓄電器)をPRした。
 2013年に資本業務提携を結んでいたトーキンとケメット。独占禁止法に抵触する恐れがあるため、互いの自社製品の本格販売は統合した昨年4月以降に持ち越された。この1年で売上高は目に見えて伸びているが、両社がもくろむ統合メリットの氷山の一角にも満たない。
 トーキンの18年3月期売上高は約430億円で、前期比約20%のプラス。好調を維持しているが、主力の海外事業の取引先は多くが日系企業だ。世界各国で急拡大する電子部品需要を取り込み、成長を持続させる秘策がケメットとの統合だった。

<欧米に売り込み>
 同じ電子部品メーカーでありながら両社は得意分野や市場が違う。
 ケメットはキャパシタ専業で欧米に強い。トーキンはキャパシタに加えセンサーやアクチュエーター(駆動装置)、電磁ノイズ対策部品を手掛けアジアで強固な販売網を築く。
 浅川取締役は「弱かった欧米で強い営業組織が手に入った。ケメットの顧客に自社製品を売り込めればグループの売り上げを拡大できる」と強調する。
 ケメットが確立した販売手法も大きな武器。同社の顧客は、大口の大手企業とインターネット販売の小口の「ロングテール」が半々となっている。
 大口と小口合わせて約18万もの膨大な顧客に応対するのが専用サイトだ。サイトに載せた約600万の製品一つ一つの寸法や性能のデータを参考に、顧客はネットや代理店から容易に購入できる。

<取り扱い10倍に>
 片やトーキンは営業担当者がメーカーを一件一件訪ね歩く販売が主流。顧客数は約1000で、ほぼ大手企業だ。ロングテールはほとんどいない。
 トーキンの小山茂典社長は「ロングテールの割合向上が課題だった。ケメットの手法を活用すれば、1人の営業マンも使わずに売り上げを倍にする可能性がある」と語る。
 同社は昨年からネット販売を強化し、今年4月には取り扱う製品を従来の約10倍に増やした。大手メーカー以外の技術者や研究者らも、小口で手軽に製品を購入できる環境を整えた。
 自動車産業に革新をもたらした米電気自動車メーカーのテスラは、かつて技術者がネットで部品を買い集めていた新興勢力だ。ITや人工知能(AI)を駆使して新たな商品やサービスを生み出せば、数年で世界企業になり得る時代。未来の大口顧客が潜むロングテールは宝の山だ。
 「統合の最終目標はグローバル企業への飛躍。まずはロングテールの企業を取り込む必要がある」。小山社長は意気込む。


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2018年08月28日火曜日


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