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<福島知事選 課題の現場>人手不足(中)製造業 技術面の継承に不安

求職者は中高年が目立ち、若者の姿が少ない相双公共職業安定所。製造業をはじめ人手不足が深刻だ=8月22日、南相馬市

 東京電力福島第1原発事故の被災地で、人手不足が深刻だ。福島県は補助金創設などで誘致を目指すが、打開策は見いだせない。任期満了に伴う知事選(10月11日告示、28日投開票)を前に、課題の現場を歩く。(福島県知事選取材班)

 好況が続く製造業にも人手不足の影が忍び寄る。福島県浜通り地方は顕著だ。

<受注受けられず>
 東京電力福島第1原発事故の影響で住民の帰還が進まない。
 「慢性的に人手が足りない。昨年の繁忙期は泣く泣く受注を断った」
 携帯電話の通信用部品などを作る相馬市の「アリーナ」。従業員140人を率いる高山慎也社長は人手のやりくりに苦慮している。
 原発事故前に年10人ほどいた地元の新卒応募者は、近年は2、3人にとどまる。年齢不問の中途採用制度を始めたものの、定着するのは一握りだ。賃金を上げる経営体力はなく、手詰まり感が深まっている。
 増産に対応するため2015年、基板製造のラインを増設した。高山社長は「限られた従業員で稼働を続けられるよう、自動化などの改良と工夫を日々呼び掛けている」と語る。
 機械製造の「日本オートマチックマシン」の原町事業所(南相馬市)は若年者を集められない現状にもどかしさを募らせる。従業員104人の大半が55歳以上。若手従業員へのノウハウの継承に不安を感じている。
 担当者は東北各県の大学を回って就職を呼び掛けているが、手を挙げる若者は少ない。
 原田修一ゼネルマネジャーは「新卒者が活躍できるようになるには5〜10年かかる。従業員の退職が進めば、社業の継続に影響が出る」と語る。

<就職自体を敬遠>
 福島労働局によると、双葉郡を含む相双地域の製造業の有効求人倍率(6月)は1.99倍。全国平均(1.76倍)や県平均(1.33倍)を上回り、人材の不足感が強い状況が続く。
 高校を卒業すると、若者は当然のように地元を離れる。原発事故後はさらに県外流出が加速している。「被災地のイメージもあり、就職そのものが敬遠されている気がする」と地域の経営者は口をそろえる。
 県は相双地域に域外から就職を希望する人向けに交通費を支給。工業高生には浜通り地方にロボット産業を集積する計画をPRして地元定着に努めている。
 だが、有効打にはなっていない。県雇用労政課の担当者は「企業の事情は多種多様で、即効性のある支援は難しい」と困惑する。
 被災地の製造業に詳しいいわき明星大の土谷幸久教授は「行政は雇用と産業振興の各担当が分かれており、一体的に対応できていない。縦割りの施策展開を改め、教育部局とも連携して若者が地元に定着するための意識醸成を息長く取り組んでほしい」と求める。


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2018年08月29日水曜日


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