岩手のニュース

台風10号豪雨から2年 施設の避難計画策定遅れ、岩手で2割に満たず

岩手県が開催した避難確保計画作製講習会=22日、県盛岡地区合同庁舎

 2016年の台風10号豪雨災害から30日で2年になる。岩手県岩泉町で高齢者施設の入所者9人が犠牲になった被害を踏まえ、国土交通省は洪水や土砂災害の危険箇所に立地する各種施設に避難確保計画策定を義務付けたが、作業は遅々として進んでいないのが実情だ。
 東北6県と全国の策定率は表の通り。2年前に台風10号の直撃で甚大な被害に遭った岩手県ですら2割に満たなかった。
 「21年までに策定率100%達成」を掲げている国交省は、上向かない策定率を「昨年6月に義務化したばかりでもある」(河川環境課)と釈明する。
 危機感を抱く岩手県総合防災室は「計画策定のための時間や人手、専門知識が足りないのではないか」と分析し、独自に講習会の開催に乗り出した。
 県央地区の講習会は、計画未策定の199施設が対象となった。提出書類の様式を説明して避難経路図の作製方法などを実地に指導したが、出席は半数以下の80施設にとどまった。
 講習会に参加したデイサービス施設「愛真館 夢ぷらざ」(盛岡市)の管理者広瀬弘美さん(49)は「検討課題が多く、作製に時間がかかる」と漏らす。
 施設は3階にあり、「災害時、速やかに避難させるべきかどうか」「独り暮らしの利用者を帰宅させていいのか」など、一つ一つ最善の答えを探さなければならないという。
 一方、厚生労働省が社会福祉施設に義務付けた非常災害対策計画の策定作業は比較的順調に推移している。高齢者施設で見ると岩手県では1月現在、洪水浸水想定区域にある施設の82.5%、土砂災害警戒区域にある施設の81.9%で策定を終えた。
 両計画は内容的に重複する部分も多く、県総合防災室の佐々木隆室長は「既に非常災害対策計画がある場合は、準用して避難確保計画も策定してほしい」と呼び掛ける。
 東北福祉大の高橋誠一教授(高齢者福祉)は「避難確保計画は対象施設の数が多い上、本来の所轄省庁ではない国交省が管轄するので施設側の反応が鈍いのではないか」と縦割り行政の弊害を指摘する。
 それでも万が一の備えの重要性に変わりはなく、高橋教授は「行政は過去の被害体験を共有し、地域ごとに想定される具体的な危険性を説明して計画作りを手伝ってほしい」と助言した。

[避難確保計画]2017年6月、改正水防法と改正土砂災害防止法の施行を受け水害や土砂災害の危険がある場所に立地する社会福祉施設、医療機関、学校に策定が義務付けられた。防災体制や災害発生時の避難誘導方法を策定する。対象施設は洪水浸水想定地域だけでも全国で5万超。

[非常災害対策計画]社会福祉施設を開設する際に策定が義務付けられている。避難指針や訓練の実施方法をあらかじめ定めておく。計画の多くは火災や地震を想定しており、水害や土砂災害を想定した計画策定率は100%に達していない。


関連ページ: 岩手 政治・行政

2018年08月29日水曜日


先頭に戻る