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<トーキンの転進 グローバル企業へ>(下)センダスト/革新続け シェア世界一

トーキン本社の入り口に展示される同社製品

 ITの急激な進化と普及に伴い膨張する電子部品市場。パソコンやスマートフォンなど機器製造のトーキン(宮城県白石市)が世界的好況の波に乗り、グローバル企業への転進を目指す。足掛かりとして昨年春、同社は米電子部品製造ケメットの傘下に入った。旧東北帝大の研究成果を事業化するため設立された老舗メーカーは生き残りを懸け、統合メリットを追求する。(報道部・高橋公彦)

<「模造できない」>
 パソコンやスマートフォンに使われるキャパシタ(蓄電器)、電流の動きを感知するセンサーなど多様な電子部品がいくつも並ぶ。トーキン(白石市)本社入り口のショーケースは、米国の電子部品製造ケメットの傘下となった昨年4月以降も変わらぬままだ。
 トーキンは1938年、当時の東北帝大金属材料研究所が開発した高透磁率合金「センダスト」と永久磁石合金「KS鋼」を事業化するため、設立された。現在の産学協同ベンチャー企業の草分けと言える。
 同社はこれまで独自開発した素材を基に電子部品を製造し、販売まで手掛けるビジネスモデルを展開。センダストは80年後の現在でも、スマホなどに内蔵されている電磁ノイズ抑制シートの材料となっている。同社製のノイズ抑制シートのシェアは、世界トップを誇る。
 IT機器の電磁ノイズ対策の部品は特に付加価値が高く、メーカーの競争が激しい。同社材料研究開発本部の及川英彦本部長は「高性能の測定器で製品の構成は分かっても、製造方法や加工法は分からない。他社も容易に模造できない」と言い切る。

<唯一無二の能力>
 オリジナルの素材から生み出されるものは当然、オリジナルの製品になる。ケメットがグローバル化を進めるパートナーとしてトーキンを選んだのも、唯一無二の開発能力とビジネスモデルにほれ込んだからだ。
 ケメットのシニア・バイス・プレジデントを兼務するトーキンのダニエル・パースィコ常務は「メーカーは素材を外部調達して製品化するのが一般的だが、トーキンは元々、素材メーカーで、部品に不可欠な材料を自社で開発できるのが強み」と指摘する。

<企業理念を貫く>
 トーキン統合後のケメットグループの2018年3月期売上高は約1330億円。グループはさらなる成長を目指し、企業の合併・買収(M&A)を検討する。対象は磁性部品やセンサー、アクチュエーター(駆動装置)のメーカーだ。
 その重責を託されたのも、トーキン。キャパシタ以外の電子部品も多く手掛ける同社の小山茂典社長がグループのM&A責任者に就いた。
 一方、ケメットの得意分野である車載用や産業用の市場で、トーキンの開発能力を生かして新製品を生み出し、売り込む方針も掲げる。
 小山社長は「競争や変化の激しい電子部品業界で80年間続いたのは素材開発で他社との差別化に成功したからだ。今後も素材革新に力を入れる理念は変えない」と語る。


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2018年08月30日木曜日


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