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<サイクル未来図 ツール・ド・東北2018>(下)風化防止/被災地の変化 感じて

ツール・ド・東北に6回連続で出場する坂田さん。「完走した時の喜びが大きい」と語る

 東日本大震災で被災した宮城県沿岸部を自転車で巡る「ツール・ド・東北2018」(河北新報社、ヤフー主催)が9月15、16日に開催される。震災からの復興支援を目的に2013年に始まり、今年で6回目。自転車文化の浸透がさらなる復興を後押しする力になってきただろうか−。「民泊」「外国人誘客」「地域づくり」の三つの観点から現状と課題を追った。(ツール・ド・東北取材班)

 石巻専修大前学長の坂田隆教授(67)は、ツール・ド・東北のコースを走るたび、自転車文化の定着を肌で感じている。2013年の第1回大会から参加し、今回で6回連続となる。
 「日頃からライダーに手を振る人が増えてきた。後方の車からクラクションを鳴らされることもなくなり、復興工事の大型車はよけてくれる」

<年々走りやすく>
 ライダーに注がれる温かいまなざしが増え、石巻圏は年々、走りやすくなっていると実感している。
 「リアス海岸の景色は美しく、アップダウンがあるからこそ走るのが楽しい」と坂田さん。国内外からライダーを呼び込み、東日本大震災からの復興を後押しする潜在力はまだまだあると指摘する。
 宮城県南三陸町観光協会は今年5月、クロスバイクを貸し出して内陸の入谷地区をガイド付きで案内するツアーを始めた。これまで12件、約20人が参加した。
 協会の佐藤慶治さん(25)は「自転車は目立つ。擦れ違う住民から気軽に声を掛けられるなど、思いがけない触れ合いが生まれている」と手応えを感じている。
 被災した沿岸部だけでなく、豊かな田園風景など地域全体の景観をゆっくり楽しめるのも自転車ならでは。「南三陸ファンをさらに増やしたい」(佐藤さん)と、協会は27日から沿岸部を走る志津川コースのツアー募集もしている。

<命奪われた場所>
 地域の付加価値を高めるこうした取り組みと同時に、ツール・ド・東北に急速に進む震災の風化を防ぐ役割を期待する声も根強い。
 震災の伝承活動に取り組む「3.11メモリアルネットワーク」の鈴木典行代表(53)は「変化を続ける被災地の復興の状況は、車で通過するより自転車でゆっくり回る方が分かる」と語る。
 鈴木さん自身、ツール・ド・東北の参加は今回で3回連続。「沿道に写真パネルを立て、震災前後の姿を見せる工夫などがあればいい」と提案する。
 震災発生から間もなく7年半。石巻市大川小6年だった次女真衣さん=当時(12)=を失った鈴木さんは、参加者がコース近くにある大川小に立ち寄り、「現場でそれぞれ何かを感じてもらいたい」と願う。
 三陸沿岸に広がる美しい光景は、巨大津波によって愛する人々の命が奪われた場所でもある。鎮魂の祈りと復興支援を胸に、4000人が秋のみやぎ路を駆ける。


2018年08月30日木曜日


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