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被災した故郷 鎮魂・伝承、筆に込め 陸前高田の画家・熊谷さん作品展

伐採直前の「奇跡の一本松」を描いた作品と熊谷さん

 東日本大震災に遭った古里の景観を次代に残し、犠牲者を鎮魂しようと陸前高田市芸術文化協会長の画家熊谷睦男さん(84)が絵筆を握り続けている。画歴半世紀を超えてなお創作意欲は衰えない。

 市内を流れる気仙川の河口付近を題材に描いた3部作は、名勝・高田松原の今昔を表現。松林が美しかった1979年11月、「奇跡の一本松」だけが残った津波襲来直後の2011年4月、そして12年9月の連作風景画だ。
 12年9月の作品は、枯死して伐採される前日の一本松を描いた。拡大鏡と極細の面相筆を使ってマツの葉の一本一本に筆を入れ、付近に咲く1輪のヒマワリに復興への願いを込めた。
 「市民が愛した高田松原を絶対に残さなければならない」と熊谷さん。自分で撮った写真やスケッチを基に一気に描き上げた。
 熊谷さんは美術教師の傍ら創作に励み、市教育長を退任後は国際公募展にも挑戦する。世界最古の公募展であるフランス「ル・サロン」の永久会員でもある。
 震災前からモチーフとしている「延年の舞・老女」は12年のル・サロンで銅賞に輝いた。岩手県平泉町の毛越寺に伝わる荘厳な舞に鎮魂の思いを重ねた作品だ。
 震災で親類や友人を亡くしたが「描くことが今まで生きてきた自分の勤め」と語る。「まだ本当の所に到達できていない。体が動く限り続けたい」とカンバスに向かう。
 50年以上の画歴で描いた作品の数々を紹介する「熊谷睦男の精神世界展」が30日〜9月2日、陸前高田市コミュニティホールで開かれる。入場無料。


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2018年08月30日木曜日


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