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<福島知事選 課題の現場>人手不足(下)消防団 帰還進まず存続危機

消防団の車両に乗り込む佐藤さん=7月22日、福島県浪江町

 東京電力福島第1原発事故の被災地で、人手不足が深刻だ。福島県は補助金創設などで誘致を目指すが、打開策は見いだせない。任期満了に伴う知事選(10月11日告示、28日投開票)を前に、課題の現場を歩く。(福島県知事選取材班)

 「若者のいる家庭に加入を呼び掛けても『うちの息子は入らない』と断られるケースが多い」
 東京電力福島第1原発事故で甚大な被害を受けた南相馬市。危機管理課の担当者が、消防団員を思うように集められない現状にもどかしさを募らせる。
 消防団員の減少は全国的な現象だ。少子高齢化の影響もあり、1955年に194万人いた団員数は2017年には85万人、100%近かった充足率も91%に落ち込んだ。

<ほとんど初心者>
 原発事故被災地はより団員不足が加速している。南相馬の充足率は84%。中でも16年7月に避難指示が解除された小高区は66%にとどまる。
 小高区では、若い世代が避難先から戻ってこないことが響いている。「帰還者の多くが高齢者。『消火活動を手伝ってくれ』とは頼みにくい」と危機管理課の担当者は打ち明ける。
 南隣の浪江町はさらに状況が深刻だ。避難指示は17年3月末に帰還困難区域を除いて解除されたが、住民の帰還が進んでいない。町内居住者は805人(7月末現在)で、住民登録者の4%にすぎない。
 六つある消防団の団員も大半が町外に暮らす。地域の消防力は著しく低下している。
 町は苦肉の策として17年4月、町職員による分団を結成した。20〜30代中心の団員25人はほとんどが初心者だ。「実践では技術的な不安が残る」と分団長の佐藤秀和さん(46)。公務との掛け持ちとあって、訓練時間を十分に確保できないという。
 復興庁が17年10月〜18年1月に原発事故被災地で実施した調査では、避難先から戻った消防団員の88.6%が「団員数が不足している」を選択した。自由記述では「消防団の存続自体が難しい」「将来的には合併しなければ継続できない」といった厳しい声が相次いだ。

<広域連携を模索>
 県は、単独での活動が難しい場合は近隣市町村の消防団が応援に駆けつける「広域連携」を模索する。ただ広域になればなるほど初期消火が遅れる課題もあり、抜本的な解決策になるかどうかは未知数だ。
 兵庫県立大大学院減災復興政策研究科の室崎益輝科長は「『自らの地域は自らで守る』という消防団の精神を踏まえれば、他の市町村を応援する広域連携には反対だ」と指摘する。
 その上で「地域で消防団の在り方を議論し、例えば中学生や女性に加入してもらうといった工夫が必要。行政は高機能のポンプ車を配備するなど、人手がなくても消防団が維持できる支援をしてほしい」と話す。


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2018年08月30日木曜日


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