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<モニュメント問題>福島市の判断、設置も撤去も「拙速」 専門家ら批判

福島市が撤去を決めたモニュメント。有識者は「撤去も含めて丁寧な手続きが必要だった」と指摘する

 福島市が展示したモニュメント「サン・チャイルド」は、わずか1カ月足らずで撤去方針が決まった。東京電力福島第1原発事故に着想を得た作品を巡る市の判断には、設置も撤去も「拙速」との指摘が出ている。福島県ゆかりの研究者3人に29日、意見を聞いた。

<問題点は不透明性>
 「作品への賛否は今回の問題の本質ではない」。いわき市出身の開沼博立命館大准教授(社会学)は「ポイントは不透明性にある」とみる。
 防護服姿の高さ6.2メートルの子どもの立像は、線量計を模した胸の表示「000」が、「線量ゼロでないと安全でないように見える」などとインターネット上で批判を浴びた。
 開沼氏は「作品の設置プロセスが分からず、特定の意図を押し付けられたと感じた人がいた」と分析。「被災地は注目され、さまざまな考えが集まる。意思決定には細心の注意が必要。除染土の仮置き場設置も関係者が協議し、ぎりぎりの地点で合意してきた。市はそこから学ばなかったのか」と首をかしげた。

<トラウマの引き金>
 福島の子どもの心のケアに関わる内山登紀夫大正大教授(児童精神医学)は「巨大で視覚的な刺激が強く、子どもに限らず原発事故のトラウマ(心的外傷)を思い出す引き金になる。公共の場所から撤去する判断は妥当」と話す。
 「ホロコースト(ユダヤ人大量虐殺)のトラウマが今も消えない人もいる。原発事故から7年は決して長くない」と強調。モニュメントがJR福島駅近くの子ども向け教育文化複合施設の入り口に設置されたことに触れ「見たくない人が見ずに済む環境設定を心掛けるべきだった」と語る。

<丁寧な手続き必要>
 サン・チャイルドは2012年の芸術祭「福島現代美術ビエンナーレ」で県内初展示された。
 芸術祭に携わる渡辺晃一福島大教授(絵画・現代美術)は「撤去の際も丁寧な手続きが必要だった。設置施設の来場者に対するアンケートだけで十分だったのか」と疑問を呈する。
 問題を提起するアートの特徴に言及。批判された表示「000」について「子どもになぜ線量ゼロがあり得ないのかを教育したり、福島が受けた被害を伝えたりするきっかけになり得たのに…」と惜しんだ。


関連ページ: 福島 社会

2018年08月30日木曜日


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