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<震災体験100年後に>仙台市職員の挑戦(中)伝える 朗読、防災ゲーム 手段多彩

新人職員の研修で体験記を朗読するチーム仙台のメンバー=4月、仙台市青葉区の市青年文化センター

 仙台市職員の自主勉強会「Team Sendai(チーム仙台)」が、東日本大震災の対応に当たった市職員の体験を聞き取り、記録する活動を続けている。「災害エスノグラフィー調査」と呼ばれる手法で、公式の記録誌には載りにくい当時の苦悩や失敗、知恵などを後世に残す。体験記を活用したユニークな教訓伝承にも取り組む。100年後を見据えた市職員有志の挑戦を追った。(報道部・長谷美龍蔵)

<息をのむ内容> 
 「避難所の小学校には夜通し、津波から救助された人がずぶぬれで搬送されてきた。低体温症なのでカーテンやシーツ、児童の運動着などを手当たり次第に集めて、肩を寄せ合った」
 4月上旬にあった仙台市の新人職員向け研修会。市職員の自主勉強会「Team Sendai(チーム仙台)」のメンバーが、東日本大震災で、若林区の避難所に派遣された女性職員の体験記を朗読した。
 壮絶な現場を克明に振り返る内容に会場全体が息をのんだ。「それでも避難所勤務で良かった。生きている人の力になれるから」。女性職員のストレートな告白にすすり泣きが漏れた。
 体験記はチーム仙台が女性職員に聞き取りし、朗読用に原稿化した。新人研修での朗読は昨年に続き2回目。活動に注目した市職員研修所が「出演」を頼んだ。
 チーム仙台は震災体験の記録だけでなく、体験を活用した市役所内部の伝承に力を入れる。中でも朗読は主要な活動になっている。
 読み手は、震災後に入庁した若手職員が主に担当する。月1回、専門の講師を招いて朗読のスキルを磨く。原稿は何度も読み返し、体験を語った市職員の心境や当時の状況を想像する。
 「震災対応を知らない若手に追体験してもらうことが最大の目的。上手に朗読しようと原稿を読み込むため、効果が大きい」とチーム仙台発起人の鈴木由美さん(55)は意義を語る。

<若手に広がり> 
 朗読以外にもユニークな伝承活動を展開する。聞き取りの様子を収めた短編映像、体験記を題材にしたミニ小説、震災の教訓を語り継ぐ歌…。メンバーの自由な発想で手段は増える。
 災害時の行動を選択する防災カードゲーム「クロスロード」の仙台編を作成する際も、市職員が震災で判断に迷った体験を問題に生かした。災害対応に当たった本人から話を聞く「語り部の会」も開く。
 伝承手段のバリエーションの多さは、「一人でも多く体験記に触れてもらうため」(鈴木さん)。教訓を受け継ぎ、次の災害に備える意識の醸成を目指す。
 鈴木さんは「人間は失敗を繰り返して学ぶが、同じ災害は二度となく学習機会に乏しい。体験談や失敗談をいっぱい聞くこと以外、学ぶ方法はない」と話す。
 南蒲生浄化センター(宮城野区)技師の西坂光さん(31)は入庁4年目。チーム仙台の活動の傍ら、自主的に職場の先輩から震災体験を聞き取りしている。
 「あの日を知る職員がどんどん減っている。できるだけ多くの体験を聞き、教訓を受け継げればいい」
 チーム仙台が仕掛けた伝承のイズムは「震災後」世代にも広がり始めている。

[クロスロード]カードゲーム形式の防災教材。正解がなく、過去の事例が正しいとも限らない質問に「YES」か「NO」のカードを選び、参加者同士で意見交換する。1995年の阪神・淡路大震災で、神戸市職員が経験したジレンマなどを事例に、2004年に第1号となる神戸編・一般編が開発された。東日本大震災後、仙台市職員の体験から質問を作成した仙台編も登場した。


2018年08月31日金曜日


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