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<台風10号豪雨2年>岩泉純木家具「町の名前冠する会社、倒すわけにはいかぬ」 流失した木材回収、工房再開

修理した木工機器で家具作りを再開した岩泉純木家具
台風豪雨で浸水し、泥だらけになった作業場=2016年9月2日(岩泉純木家具提供)

 岩手県内に大きな爪痕を残した台風10号豪雨から30日で2年となった。「林業と木工のまち」岩泉町を代表する家具工房「岩泉純木家具」は作業場の木工機材が水没。木材も大半が流失した。それでも「必ず再起してみせる」。町の伝統産業を担う職人集団は、決して諦めなかった。

 大規模氾濫を起こした小本(おもと)川の支流に隣接する作業場は床上1メートルまで浸水。木材を保管していた倉庫3棟が全壊した。
 被害総額は約4000万円に上る。山あいの小さな工房に、機材や木材を新たに調達する資力はない。「廃業が頭をよぎった」と会社を切り盛りする専務工藤林太郎さん(37)が当時を振り返る。
 工房の再生へ背中を押したのは職人たちだった。「町の名前を冠する会社を倒すわけにはいかない」と作業場で泥のかき出しが始まった。モーターが無事だった機材は自分たちで分解、修理。油を差してよみがえらせた。
 「テーブルの脚だけなら最低限の道具でも職人の技で作ることができる」と16年末に家具作りを再開。年が明けると修理に出していた機材が次々戻り、作業場に据え付けられた。
 岩泉純木家具は、1975年の創業当初から丸太の一本買いが信条だ。どんな家具になりたいか、職人が木と相談して決める。「大切な木を取り戻しに行こう」。小本川流域を河口まで歩き通して木材を回収する作業は7カ月を要した。
 被災当時に15人だった従業員は、過酷な復旧作業が続いた2年間で高齢の4人が引退したり亡くなったりした。受注減、職人減で売り上げは今も被災前の8割程度にとどまる。
 地場産業の苦境に、町内外の企業などで構成する「岩泉の明日の林業をつくる会」(会長・中居健一町長)も支援に乗り出す。
 つくる会の仲介で地元の製材会社や集成材工場が協力を申し出て「ちゃぶ台」を製作。復興チャリティー商品としてインターネットで販売されている。
 今年4月には新戦力が加わった。「実家のある岩手で家具作りをしたい」と東京都の建築事務所から転職した石川宗孝さん(35)だ。盛岡市にある直営店の店長として家具のデザインを担当し、伝統の世界に新風を吹き込もうとしている。
 被災から2年。「恩返しの気持ちを胸に、岩泉の山と人に寄り添った仕事をしたい」。職人たちは今日も木との対話を続ける。


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2018年08月31日金曜日


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