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<震災体験100年後に>仙台市職員の挑戦(下)広げる 積極公開 組織間連携育む

弁護士への出前講座で自身の震災体験を語るチーム仙台のメンバー(右)=7月24日、仙台市青葉区の仙台弁護士会館

 仙台市職員の自主勉強会「Team Sendai(チーム仙台)」が、東日本大震災の対応に当たった市職員の体験を聞き取り、記録する活動を続けている。「災害エスノグラフィー調査」と呼ばれる手法で、公式の記録誌には載りにくい当時の苦悩や失敗、知恵などを後世に残す。体験記を活用したユニークな教訓伝承にも取り組む。100年後を見据えた市職員有志の挑戦を追った。(報道部・長谷美龍蔵)

<危機感を共有>
 自治体職員と弁護士。異色のコラボレーションが新たな化学反応を生んだ。
 仙台市職員の自主勉強会「Team Sendai(チーム仙台)」は7月下旬、仙台弁護士会災害復興支援特別委員会に依頼され、初の出前講座を開いた。
 東日本大震災で避難所運営やがれき処理を担当した市職員の体験記を別の職員が朗読。震災体験を聞き取って記録し、教訓を伝えるノウハウを伝授した。
 「過酷な状況を追体験することが教訓の伝承には有益だ」。座談会では若手弁護士とチーム仙台のメンバーが危機感を共有した。
 出前講座を頼んだ宇都彰浩弁護士(45)は「チーム仙台のやり方を弁護士会でもまねたい。教訓を未来につなごうとする思いはわれわれも同じだ」と語った。
 チーム仙台の活動は市職員の体験を記録に残し、市役所内部で活用するだけにとどまらない。要請があれば他の自治体職員や一般市民にも体験を伝える。昨年11月には、南海トラフ巨大地震に備える横浜市にも出向いた。
 震災記録チーム代表の柳谷理紗さん(33)は「災害体験の記録化は企業や団体、家庭でも取り組める。体験を伝えたい人が多くなれば防災の総合力が高まるのではないか」と考える。

<「市民の記録」>
 震災7年が過ぎた今年3月18日。チーム仙台は青葉区の東北大災害科学国際研究所で「あれから7年スペシャル」と題した震災伝承イベントを開催した。
 市職員や市民ら約100人が参加。体験記の朗読や伝承手法を考えるワークショップ、日用品を利用した災害時ファッションの提案など、多彩なメニューで教訓の幅広さを実感した。
 市内の防災関係者やNPO、研究者と連携し、2年前に始めた3月の恒例イベント。チーム仙台発起人の鈴木由美さん(55)は「年1回は体験記に触れ、教訓を思い出したい」と話す。
 会場では体験記の「概略版」を配った。聞き取りした市職員が許可した範囲内で、積極的に体験記を公開するのがチーム仙台の流儀だ。
 「体験記には市職員が見た市民の頑張り、地域の奮闘も含まれている。これは市民の記録でもある」と鈴木さんは説明する。
 市は本年度、チーム仙台が大学と取り組む災害エスノグラフィー調査の共同研究に加わった。有志の活動は一部が事業化された。
 市防災環境都市・震災復興室の高橋輝(あきら)室長は「体験の記録化はチーム仙台と連携し、行政として計画的に進めたい。震災10年に向け、体験記を公式記録として後世に残せるよう課題の整理を急ぐ」と強調する。
 震災体験を100年後の人たちへ−。チーム仙台の願いは大きなうねりとなりつつある。


2018年09月01日土曜日


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