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<震災体験100年後に>対応の過程「次」に生きる/常葉大大学院環境防災研究科 田中聡教授に聞く

田中聡(たなか・さとし)1963年東京都生まれ。早大大学院理工学研究科博士課程修了。京大防災研究所助手などを経て2013年から現職。専門は防災学。チーム仙台、東北大、常葉大、仙台市による共同研究の代表を務める。著書に「防災の決め手『災害エスノグラフィー』」など。

 仙台市職員の自主勉強会「Team Sendai(チーム仙台)」が取り組む東日本大震災の体験の記録と伝承について、災害エスノグラフィー調査の第一人者で、常葉(とこは)大大学院環境防災研究科の田中聡教授(54)に聞いた。(聞き手は報道部・長谷美龍蔵)

<職員発は貴重>
 −自治体職員の災害対応の体験を記録する意義は。
 「自治体がまとめる災害記録誌は組織の記録。個々の職員の視点は丸められ、出来事やデータなど災害対応の『結果』だけを後世に伝える。それはそれで大事な記録だが、次の災害に役立つ資料かどうかという観点に立つと『避難所のボランティアが何人だった』と知ったところで、あまり意味はない」
 「大災害は多くの職員が初めて経験する。災害対応の現場ではいろいろな失敗や間違いも起こり、それを苦労しながら修正し、記録誌に残された結果に至っている。プロセスを知らなければ本当の意味で次の災害に生かすことはできない。職員の体験には、こうした記録誌には載らない出来事がたくさん含まれる。それを明らかにする手段が災害エスノグラフィー調査だ」

 −チーム仙台の活動をどう見ているか。
 「自治体職員の中で、自発的に災害エスノグラフィー調査が始まったことが最大の特徴。1995年の阪神・淡路大震災以降、いくつかの大災害で調査が行われたが、ほとんどは研究者発の取り組みで自治体職員発は珍しい。しかも有志グループが始めた活動が大学との共同研究に発展し、後から自治体が事業化したケースは全国初。普通の逆パターンだろう」

<想像を広げて>
 −体験の朗読など多彩な伝承活動を展開する。
 「体験記を読み、得られた知見を話し合うワークショップは実践例があるが、朗読という手法はユニークな取り組みだ。インパクトがあり、教訓の伝承に効果的な試みになるかもしれない。ただワークショップも朗読も、体験記に触れるきっかけにすぎない。体験記を自分の経験と重ね合わせながら読み、『自分ならこう対処しよう』などと発想することが一番大事だ」

 −今後、災害エスノグラフィー調査は広がるか。
 「東日本大震災で、仙台市の災害対応は非常に良かったと思う。神戸市や新潟市の経験を参考にしながらもそのまま実行することはなく、地域に一番合う仕掛けを自分たちで考えた。結果より、過程の方が重要と分かっていたのだろう」
 「災害エスノグラフィー調査に厳密なやり方はない。体験を記録に残し、あの時何に悩み、どう考え、何をどう工夫したのかというプロセスを吸収して、次の災害に備えてほしい」


2018年09月02日日曜日


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