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<ニュース深掘り>「雑草軍団」金足農 甲子園準V 全力、堅実さ 共鳴広げた

2回戦で大垣日大(岐阜)を破り、全員で背中を反らせて校歌を歌う金足農の選手たち=8月14日、甲子園球場

 第100回全国高校野球選手権大会で秋田県代表の金足農高(秋田市)が快進撃を見せ、準優勝に輝いた。雑草軍団と称されるナインの見事な勝ちっぷりはもちろん、選手たちの所作やチームの伝統も大きな注目を集めた。人々の心をわしづかみにした存在感は高校野球の原点を問い直し、向き合うべき課題も浮かび上がらせた。
 雑草軍団の大躍進を象徴する場面を、プレーとそれ以外の両面で考えた。
 プレー面の代表的な場面は準々決勝の近江(滋賀)戦の九回裏。逆転の2点スクイズでサヨナラ勝ちした。何度も練習したお家芸のバントによる泥くさい逆転劇で「金足農にしかできない勝利の引き寄せ方」といっても過言ではない。
 プレー以外では、試合後に全員がのけ反って校歌を歌う「全力校歌」だ。顔いっぱいに大粒の汗を流し、大声で歌いきる姿は強いメッセージ性にあふれていた。
 甲子園で始めたのではない。春季県大会や夏の秋田大会でも同じように歌っており、普段からしていることを自然にやったにすぎない。地元では当たり前の光景が甲子園の話題をさらったことは、低迷期をくぐり抜けた秋田の高校野球に新たな飛躍の可能性を感じさせる。
 開幕を前にした出場チームの甲子園見学で、金足農ナインは定位置に正座し、手を上げて大声を出した。気合を入れてリラックスしようと、日々の練習でも取り組んでいる「声出し」。大声を発する一人一人の表情は全力校歌に通じるものがあった。
 全国から有望選手が集まる強豪の私立校とは対照的に、金足農は歴代ナインを地元出身者が占める。限られた戦力で結果を出してきた。
 今回の甲子園でも、バントの多用など堅実さが売りの野球で劇的な試合を重ねた。全力で声を出すことも含め、日々の積み重ねを経て巻き起こした旋風。共鳴の輪は一気に全国に広がった。
 準決勝の日大三(西東京)戦の八回裏、1点差に迫られた場面。甲子園の大観衆の大半が金足農の吉田輝星(こうせい)投手に力強い声援を送ったように感じた。
 数々の局面は、心を合わせてがむしゃらに戦い抜くことが道を開くという高校野球の原点を多くの人々が思い起こす機会になったのではないか。
 金足農は秋田県大会から甲子園の決勝まで選手交代のない「9人野球」で戦った。吉田投手は11試合を連投し、決勝では疲労を訴えて自らマウンドを降りた。エースに頼る野球が限界に達したともいえる。
 中泉一豊監督は大会後の記者会見で「実力を考えて9人野球をした」と吐露。限られた選手で戦う公立校ゆえの悩みをにじませた。
 金足農の快挙は、エリート集団のような環境とは無縁の多くのチームにとって希望の光となった一方、高校野球界が抱える課題を突き付けた。選手層の薄い学校でも選手の体を守りながら勝ち進める仕組みができないか、議論を深める時だろう。
(秋田総局 佐藤駿伍・鈴木俊平)

[金足農と甲子園]初出場は1984年春。1回戦で甲子園初勝利を挙げ、2回戦敗退。同年夏はベスト4に進む快進撃。準決勝のPL学園(大阪)戦は8回表まで1点差で勝っていたが、桑田真澄投手(元巨人)に逆転2点本塁打を打たれて敗れた。95年夏にベスト8進出。その後、98〜2007年に春夏計4回出場するも初戦敗退が続いた。11年ぶり出場の今夏は秋田県勢として103年ぶりに決勝の地を踏んだ。


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2018年09月03日月曜日


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