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防災と保育、工夫で両立 岩手・大槌のこども園、震災を教訓に取り入れ保育関係者が注目

新園舎の中庭で元気に遊ぶ子どもたち

 岩手県大槌町吉里吉里の幼保連携型認定こども園「つつみこども園」の取り組みが、保育関係者の関心を呼んでいる。新たな園舎は、東日本大震災で避難所になった際の教訓を取り入れて3月に完成した。独特の構造で子どもを育む環境を整えただけでなく、防災拠点としての役割も見据えた工夫を凝らした。
 高台に立地する園は以前から地域の自主防災組織に加わり、震災後は園児たちに加えて住民50人以上を受け入れた。職員は自宅や家族を失いながらも懸命に避難所運営に当たった。
 隣接地に園舎を建て替えることになり、震災時に生活水の確保に苦労した反省から新たに井戸を整備。普段は水遊びやどろんこ遊びに使いつつ、非常時の給水源とする。
 避難所になることを想定し、シャワーやトイレも大人の利用を考慮した設計とした。園児50食分だった備蓄食料は100人が2日間過ごせる量に増やした。
 大槌町は震災で人口の約1割に当たる1286人が犠牲になった。復興途上の地域では、両親の仕事が不安定な家庭も少なくない。園は建て替えに合わせ、保育所からこども園に移行した。保護者が失職しても施設を移る必要がないように配慮した。
 園長の芳賀カンナさん(50)は「給食室も備えている園舎が災害時の重要な拠点となることを常に意識している」と話す。
 防災面に加えて子どもの成育環境にも十分配慮した。最大の特徴は、コの字形の木造園舎に囲まれて園児たちが伸び伸び遊ぶ芝生の中庭だ。
 中庭に面したウッドデッキは遊び場と通路を兼ねており、職員は園児を多方向から確認して駆け付けることができる。死角を減らすため壁には多くの窓を設けた。動線を確保することで職員同士のカバーも容易になったという。
 震災から間もなく7年半。災害対策に取り組むと同時に芳賀さんが目指すのは「地域に開かれた施設」であることだ。芳賀さんは「行事や散歩で住民と触れ合い、家族以外にも自分を大事に思ってくれる人がいることを園児たちに伝えたい」と願った。


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2018年09月05日水曜日


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