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<週刊せんだい>里親家庭 健やかな育ちの場(1)責任と喜び 託され実感

家庭に迎え入れた1歳3カ月の男の子と居間で遊ぶ和成さんと直美さん

◎迎える/特別視されず地域社会に

<3人の子を預かる>
 幼い頃の家庭の記憶を、人はずっと忘れない。「預かった子たちが大きくなった時に、佐々木家にいて良かったと思ってもらえたらいい。子どもたちのために、できる限りのことをしてあげたい」。2013年に宮城県登録の里親となった佐々木和成さん(52)、直美さん(50)夫妻=岩沼市=は、穏やかにうなずき合う。
 佐々木さん夫妻は県の児童相談所から、6歳の女の子と5歳の男の子のきょうだいと、1歳3カ月の男の赤ちゃんを長期委託されている。
 夫妻の長女(27)と長男(25)は既に結婚し独立。今は、中学1年の次男(13)と幼い3人の里子たちと一つ屋根の下、にぎやかに暮らす。
 子どもの心身が安定して成長するには、落ち着いた環境で特定の大人に育てられることが大切とされる。このため国は、乳児院・児童養護施設で暮らす子どもたちを、里親に預けることを推進している。
 3年前、施設から佐々木家にやって来た頃のきょうだいは、家庭での生活に戸惑うことが多かった。一緒にスーパーへ行っても、「怖い」と店内に入れなかった。男の子(5)は「エンエン」と何時間も泣く状態が続いた時期もあったが、直美さんは「今は2人とも、元気に幼稚園に通っています」と目を細める。
 「児童相談所や先輩里親はいつも親身にアドバイスをくれます」と和成さん。「寄り添ってくれる人を待つ施設の子たちを目の前にすると、大人は(里親を)絶対にやるんだという気持ちになる」と力を込める。

<全国4番目の水準>
 「福祉行政報告例」によると、17年3月末時点で、県内では里親家庭に186人が、乳児院と児童養護施設に376人が暮らす。里親委託率は33.1%と全国で4番目に高い。
 県は15年3月、施設で暮らす子どもたちの家庭的養育を進める15〜29年度計画で、最終年度の里親委託率を全国で最も高い53.2%にする目標を定めた。以来、里親推進県として支援事業を積極展開する。
 県と仙台市の登録里親数は17年3月末現在、計322世帯。家庭を必要とする子に最もふさわしい里親を見つけやすくするには、新たな登録者の開拓が欠かせない。
 委託を進められない要因として、県や市は「世間では、里子が養子と誤解されがちだからだ」と指摘。生みの親が「里親に子どもを取られる」と拒否感を示すこともある。
 県子ども・家庭支援課は「里親家庭はそれぞれが独立した『施設』で、里親は『施設長』のような立場にあることを理解してほしい」と、里親が特別視されずに地域社会で当たり前の存在となることを目指している。

[乳児院・児童養護施設] 親の病気や貧困、虐待などのため家族の元で暮らせない子どもたちが生活する施設。入所後は里親を含めた家庭への復帰や社会での自立を目指す。入所児の年齢はおおむね、乳児院が0〜2歳、児童養護施設が2〜18歳。宮城県内には、乳児院が仙台市に2カ所、児童養護施設が仙台市に4カ所と気仙沼市に1カ所ある。

◎子どもたちとともに/大事にされる経験を 乳児院丘の家乳幼児ホーム 地主和宏(じぬしかずひろ)さん

 児童福祉現場のベテラン職員の思いを紹介する。
     ◇      
 服のボタンを留められた時の得意げな顔、ふとした時に見せる寂しそうな表情。「小さな体で一生懸命に表現する喜びや悲しみを、一緒になって受け止めてあげたい」。仙台市青葉区の乳児院「丘の家乳幼児ホーム」で働く保育士の地主和宏さん(50)は、そんな思いでたくさんの子どもたちを26年間見守ってきた。
 ホームは1955年12月の創設で、社会福祉法人仙台キリスト教育児院が運営する。おおむね0〜2歳の約20人が、落ち着いた生活を送れるよう5グループに分かれて暮らす。
 職員は看護師や管理栄養士ら約40人。入所した子が退所するまでを同じ職員が担当する仕組みを整えている。地主さんは「ぐんぐん成長する幼い時期に、大人から大事にされる経験をたくさんさせてあげたい」と語る。面会に来る家族へのサポートにも心を砕く。
 日常面では、子どもの前で洗濯や掃除をしてみせて家庭的な空間となるよう工夫を凝らす。一方で、食事の支度は調理室で行うため「野菜を切るトントンという生活の音を聞かせてあげることはできないのです」と地主さん。家庭に近づけようと試行錯誤が続く。
 ホームは近所の乳幼児と親向けに、健康教室を週1回開いている。親子が集う教室には、ホームの子どもたちも参加する。「これから先も、地域と広くつながりを持ちながら歩んでいけたら」。地主さんと職員みんなの願いだ。

須貝隆園長(右)と打ち合わせをする地主さん=仙台市青葉区小松島新堤の丘の家乳幼児ホーム

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2018年09月06日木曜日


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