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<震災7年半>被災地、自立へ方向転換を 政策研究大学院大・飯尾潤教授に聞く

[いいお・じゅん]東大大学院博士課程修了。埼玉大助教授などを経て2000年から現職。専門は政策研究など。復興庁復興推進委員会委員も務めた。神戸市出身。56歳。

 政府の東日本大震災復興構想会議で、検討部会長を務めた政策研究大学院大の飯尾潤教授に、7年半の予算執行に対する評価と課題を聞いた。(聞き手は報道部・桐生薫子)

 −復興関連予算の歳出総額は、2017年度までの7年間で32兆円を超えた。現状をどう分析するか。
 「今回ほど予算の制約なく復興事業を進められた例は過去にない。被災規模があまりに大きく、全体像が見えないまま財源フレームを組まざるを得なかった。通常は原形復旧のみ国費を使うが、かさ上げや高台移転も認められた。増税に対する国民の反発がなかったことも後押しした」
 −単年度の執行率は今も60%台で低迷する。
能力追い付かず
 「自治体が安心して事業に取り組めるよう、早めに予算を振り分けた経緯がある。繰り越し可能な基金的運用にしたため、執行率が上がらないのは仕方ない。ただ、予算規模に自治体の能力が追い付いていないのも現実。通常の10倍近くに急増したケースもあり、職員や役場機能を失った自治体は厳しかった」
 −被災者本位の復興を進めるためには、個別事業の検証も必要だ。
 「地元負担を実質ゼロにした影響で、事業規模が過大になった側面は否定できない。阪神大震災の被災地が今も借金に苦しむ状況を踏まえ、多くの国費を入れる制度設計にした。その結果、『使わなければ損』との意識が広がり、人が住まない土地に防潮堤を造るような事象が生まれた」
 −東京電力福島第1原発事故の復旧復興を巡る費用は、膨らみ続けている。
 「福島をある程度特別扱いするのはやむを得ない。国が帰還困難区域の除染に着手したのは、避難自治体を見捨てないとのメッセージだ。風評被害が激しく、県全域に過分な予算を投入している印象も受ける」
 −震災から7年半が経過した被災地の課題とは。
 「依存体質から抜け出せるかが課題だ。中小企業のグループ化補助金は産業の縮小を防いだが、ビジネス感覚がまひする副作用がないわけではない。復興需要の収まりとのバランスを見ながら、自立に向けたかじを切らなければならない」
 −政府が20年度までと定めた復興期間終了後の財政措置はどうあるべきか。
財政圧迫の懸念
 「災害公営住宅など箱ものの維持管理費が心配だ。特に宮城は市町村が全て管理しており、財政を圧迫する懸念がある。誰かにしわ寄せが及ばないよう、後始末に関する経費の支援は欠かせない」


2018年09月11日火曜日


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