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<週刊せんだい>里親家庭 健やかな育ちの場(2)研修重ね養育力アップ

東北で初めて開かれたフォスタリングチェンジ・プログラムを行うための児童福祉関係者向け人材養成講座。日本財団の助成を受けてけやきが主催した=8月下旬、仙台市青葉区
子どもたちと食べる晩ご飯の配膳準備をする佐藤さん=仙台市太白区茂庭台の仙台天使園

◎支える/専門機関、先駆的取り組み

<真のニーズに対応>
 かんしゃく、イヤイヤ、食べ散らかしといった態度を取る子どもの真のニーズを里親が見極め、適切に対応できる力を身に付ける英国生まれの研修「フォスタリングチェンジ・プログラム」が今注目されている。
 東北では、宮城県が創設した「みやぎ里親支援センター けやき」(仙台市青葉区)がいち早く取り入れ、昨年秋から実施している。
 このプログラムは、里親委託率が7割に上る英国の病院で1999年に開発された。効果的な子どもの褒め方、里親自身のケアなどをテーマに、里親が少人数で意見を出し合う場を週1回ペースで12回続ける。
 受講者からは「これまでは単発的な研修が多かった。このプログラムで、子どもと丁寧に向き合う大切さを再認識できた」「自分の子育てのやり方を、少しアレンジすればもっとうまくいくんだということに気付けた」などの声が上がっている。
 けやきは、里親委託を推進する県が昨年1月に設置した。県登録の里親約120世帯でつくる「県なごみの会」(青葉区)と、社会福祉法人仙台キリスト教育児院(青葉区)が共同で受託運営する。自治体が里親に特化した支援機関を設置するのは、全国でも先駆的な取り組みだ。
 昨年度は里親制度説明会をはじめ、里親家庭の交流会、養育力アップのための研修、東日本大震災で親を亡くした子どもの親族里親を対象にしたサロンなどを計約70回開催した。
 里親に関する業務全般はこれまで、児童相談所が担ってきた。けやきをつくった背景には、児相職員が子どもの虐待に関する対応で精いっぱいとなっている実情がある。

<「喜びや力もらう」>
 けやきセンター長には、2011年9月からなごみの会会長を務め、里親仲間からの信頼が厚いト蔵(ぼくら)康行さん(63)=蔵王町=が就いた。
 1986年に県登録の里親となったト蔵さんは、これまでに計24人の子どもを預かり、生みの親の元に復帰させたり自立させたりしてきた。現在はファミリーホームを開設し、6人の里子たちと暮らす。
 世間では里親制度について、子育てをしたい大人のために子どもを紹介する、という意識が持たれがちだ。だが、違う。各地で展開する説明会で、ト蔵さんは参加者にこう語り掛ける。「里親制度は、子どもにとって最適な養育者を探す子どものための制度です」。そして続ける。「大人は、子どもを一方的に世話するのではなく、子どもからたくさんの喜びや力をもらう。お互いに協力し合って、家庭生活はつくられていく」

[ファミリーホーム(FH)]生みの親の元で暮らせない子どもと、養育する大人(補助者含め3人以上)が家庭生活を営む住居。始めるには、里親や児童福祉職員の経験などが必要。預かれる子どもは、里親世帯は4人までで、FHは6人まで。2009年、国が事業化した。FHは養育者の自宅である点が、複数の職員が通勤する施設のグループホームと異なる。

◎子どもたちとともに/豊富な経験 必要性実感 児童養護施設仙台天使園 佐藤忠俊(さとうただとし)さん

 寝食を共にしたり、勉強を教えたり、遊んだり。40年以上を育ち盛りの子どもたちと一緒に過ごしてきた。仙台市太白区の児童養護施設「仙台天使園」で働く佐藤忠俊さん(67)の胸には、「施設は子どもや親にとって、最後のとりでだ」との強い思いがある。
 園は1933年4月の創設で、今年85周年を迎えた。社会福祉法人ロザリオの聖母会(同市太白区)が運営する。2〜18歳の60人ほどが暮らし、約40人の職員が交代しながら成長を見守っている。
 佐藤さんは77年4月に園の職員となった。前年にがんで父親=当時(54)=を亡くし、やり場のない悔しさを抱えていた佐藤さん。職員実習で接した子の顔が、「何かを言いたそうな表情をしていた」ことが、頭の奥に残っている。
 長年勤務する中で、退所した子が若くして亡くなったと知らされた経験がある。「もっと何かしてあげられることはなかったか」と、後悔の念が今もある。病気や経済面などに悩みながらも、生活を維持しようと必死に努力する多くの親の姿も見てきた。
 3年前、同園の里親支援専門相談員となり、児童相談所や里親会と連携を一層密にしている。園に生活拠点を置く子どもが、週末や夏休みなどを利用して家庭生活を一時体験できるよう、子どもと里親のマッチングに努める。
 「園には、協力し合って子どもと親に向き合ってきた経験豊富な職員がたくさんいます」。児童養護の現場で、専門性を持つ職員がますます必要とされると感じている。


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2018年09月13日木曜日


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