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<震災7年半>検証・復興関連予算(2)帰還への壁/ハコモノ整備 空回り

空き地が広がる川俣西部工業団地=福島県川俣町

 東日本大震災から7年半が経過し、政府が2020年度までと定めた10年間の復興期間は残り4分の1を切った。19年度までの復興関連予算は総額35兆円を超える見通しだが、被災者の生活再建は思うように進まず、滞ったままの事業も少なくない。財政支援の区切りが迫る中、足元の復興実感度との乖離(かいり)は広がっている。

 山林を切り開いた造成地に空き地が広がる。福島県川俣町にある川俣西部工業団地。7.7ヘクタールに及ぶ敷地の64%は今も使い道が決まっていない。
 東京電力福島第1原発事故で被害を受けた川俣町は町域の3割が一時避難区域に指定され、1200人が住まいを追われた。未曽有の災害に直面する中、町は16億2000万円をかけて造成した工業団地に産業復興の命運を託した。

■進出2社のみ

 現実は願い通りに進んでいない。2016年3月の完成後、進出したのは2社のみ。町企画財政課の橋本卓哉課長補佐は「問い合わせはある」と前置きした上で「誤算だったのは人手不足。有効求人倍率が1.5倍を超えているため『人手が集まらない』と不安を感じて進出をためらう企業もある」と打ち明ける。
 沿岸部の楢葉町でも、25億5500万円を投じてJR竜田駅の東側に造った産業団地6.3ヘクタールの18%が空いている。用地買収が進まず一部区画が不整形になったため、使い勝手の悪さもあって進出に二の足を踏む企業があるという。
 町の担当者は「住民が帰還できる環境を整えようと造成を急いだ。このまま空き地にしておくわけにはいかず、企業を誘致して埋めたい」と語る。
 福島に対する復興関連予算で、両町が団地造成に活用したのは福島再生加速化交付金だ。避難指示を受けた県内の12市町村を中心に、帰還に向けた環境整備などを進めるため約50のメニューを用意。13年度から6年間で総額5300億円(当初予算ベース)が計上されている。
 「使い勝手が良く、きめ細かなニーズに対応できる。福島の再生を加速する原動力として活用する」。復興庁の担当者は強調するが、多額の国費投入に見合う成果を上げていないという指摘もある。

■効果つかめず

 避難指示が解除された地域の住民の帰還は伸び悩んでいる。自治体の住民登録者に占める実際の居住者の割合は楢葉町が49%、飯舘村が15%、浪江町は4%にとどまる。
 「避難1年目に小学校に入学した子どもは中学生になっている。避難先で既に定住している事情もあり、古里のインフラを整備しても帰還の誘発にはなりにくいのではないか」。県の担当者は帰還を促す各種事業を進めながらも効果をつかみかねている。
 復興事業は街づくりの手段だが、被災地はハード整備が目的化し、中長期的な地域の将来を考える余裕がなくなっているのではないか。浪江町の避難者を支援しているNPO法人「新町なみえ」理事長の神長倉豊隆さん(67)は言う。
 「行政はハコモノの整備に全力を挙げているが、もっと避難者一人一人に寄り添ったソフト面の支援にも取り組んでほしい」
(福島総局・神田一道)

[福島に対する復興関連予算]「原子力災害からの復興・再生」として国は2018年度、福島第1原発事故に伴う中間貯蔵施設の整備費など7477億円を計上した。この中には住民の帰還に向けた予算として、福島再生加速化交付金828億円、特定復興再生拠点(復興拠点)の整備事業690億円なども盛り込まれている。


2018年09月13日木曜日


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