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<震災7年半>実れ 復興の綿花(下)アパレルメーカー/産業化へ新たな段階

コットン製品を販売する「みのりカフェ」の店頭。手に取りやすい小物が並ぶ

 綿花栽培などを通じ、東日本大震災の被災農家を支援する「東北コットンプロジェクト」が順調に実を結んでいる。宮城県内の綿花畑で安定した生産量を確保し、商品化への道筋も見えてきた。試行錯誤する生産者、支えるボランティアや商品開発に知恵を絞るアパレルメーカー。8年目を迎えた復興への思いを追う。
(小牛田支局・山並太郎)

<競争力つける>
 東日本大震災の復興支援事業「東北コットンプロジェクト」で栽培される綿花は、生産量が安定してきた。「綿花産業を東北に根付かせる」という目標を掲げ、製品化と販売ルートの確立という新たな段階に入っている。
 「活動PRの展開は」「綿花を通した地域貢献の在り方とは」。アパレルメーカー大手「アダストリア」(水戸市)の担当者はアイデアを膨らませる。
 同社は2013年からプロジェクトに協賛。これまで、苗植えや収穫作業に社員10人程度が参加してきた。ノベルティ品の配布などを経て、現在は製品開発に本腰を入れる。19年中の販売を視野に、社内の組織体制を強化しつつある。
 ポイントは「安価な海外産に対し、宮城産がどうやって国際競争力をつけるのか」にある。現在の綿花で良質な製品はできるが、価格を高く設定しなければならないのが現状だ。
 同社の広報担当者は「製品そのものの魅力に加え、復興という付加価値を持たせる。販売の工夫と一体となれば成功につながる」と信じる。

<「風化」を懸念>
 全国農業協同組合連合会(JA全農)が運営するJR仙台駅ビルの「みのりカフェエスパル仙台店」の店頭には17年7月から、同プロジェクトの製品約20種類が並ぶ。扱うのはタオルや手拭いといった小物。「手に取りやすく、買いやすい」をコンセプトとする。
 店長の佐々木香織さん(25)=仙台市若林区=は、震災の「風化」を懸念する一人。「プロジェクトが震災を機に始まったことを知らない客もいる。商品を目にすることで、活動や震災への興味が全国に広がってほしい」と期待する。
 製品開発と販売促進は、生産者への「利益還元」につながる。
 生産者は作付面積や収穫量などに応じた補助を受けてきたが、名目上の赤字は年間20万〜40万円。ある生産者は、作業に来るボランティアをもてなす飲食代やイベント代など計上外の出費を含めると年間約100万円超の赤字が出ているという。

<安心が欲しい>
 「無償の社会奉仕」の意味を理解はしている。「だけど…」と別の生産者。「作るだけではなく『確実に売れる』という安心が欲しい」との本音も漏らす。
 同プロジェクト広報の写真家中野幸英さん(40)=東京都=は、生産者が持つ「手間をかけて作れば作るほど赤字になる」というジレンマの解消に心を砕く。
 夢は「100%東北産の製品の実現」。そのために「アレンジ力が試される。ようやくそれを考えられる段階に来た」。現在もプロジェクトへの参加を望む企業から問い合わせがあるといい、各分野の専門家の知恵を結集し「産業」への昇華を心に描く。
 不安と期待が入り交じる中で始まった綿花栽培計画。被災地へ希望を届ける実が今、はじけつつある。

[メモ]2011年度産の綿花を使い、12年にポロシャツ、ジーンズ、タオル、ストールの4種類を製品化。13年度からプロジェクトに参加するメーカーが独自開発に着手し、今年8月現在、衣類のほか繊維類、雑貨などが加わり50種類に上る。開始当初、海外産オーガニックコットンとの混入率は1〜3%だったが、17年度に5%に伸びた。18年度産は10%を見込む。


2018年09月14日金曜日


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