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<震災7年半>検証・復興関連予算(3)産業底上げ/経営苦戦 制度に限界

グループ化補助金を活用し、自力で高台に再建したキャピタルホテル1000=陸前高田市

 東日本大震災から7年半が経過し、政府が2020年度までと定めた10年間の復興期間は残り4分の1を切った。19年度までの復興関連予算は総額35兆円を超える見通しだが、被災者の生活再建は思うように進まず、滞ったままの事業も少なくない。財政支援の区切りが迫る中、足元の復興実感度との乖離(かいり)は広がっている。

 陸前高田市中心部で被災したホテルは、再オープンから間もなく5年を迎える。客室の平均稼働率は約5割。目標の7割が遠い。
 東日本大震災の津波で全壊被害を受けた「キャピタルホテル1000」は2013年、市内の沿岸部から高台に造成した土地にいち早く移転新築した。事業費9億円は主に国のグループ化補助金の活用や、金融機関からの借り入れなどで工面した。

<収益回復せず>
 毎週のように被災地を視察に訪れる人々やボランティアを乗せた大型バスがやってきた光景は、もう見られない。社長の松田修一さん(51)は「年月がたてば当たり前なこと。無策であればさらに厳しくなる」と危機感を募らせる。
 規模縮小や宿泊客の減少で、売り上げは震災前の7割程度。料理の見栄えを良くしながら原価管理を徹底するなど努力を重ね、黒字は確保する。借入金の返済を続けるが、間もなく5年間免除されていた固定資産税の支払いも始まる。
 「コスト削減だけでは限界がある。旅行客を獲得しするしか生き残る道はない」と松田さん。地道に営業活動を展開しながら、民間と行政が一枚岩となった観光経営組織を設立する必要性を訴える。
 国は被災地の産業・なりわい再生のため、11〜17年度で約4兆2000億円の復興予算を組んだ。政府系金融機関による災害関連融資(約1兆6000億円)を除く最大規模の事業が、グループ化補助金だ。青森、岩手、宮城、福島4県の約9700事業者に4800億円の支出を決めた。
 ただ、復興度合いはばらつきが目立つ。国が交付先に毎年実施するアンケートによると、震災前の水準まで売り上げが「回復」したと答えた事業者の割合は、15〜17年度の3年連続で45%程度だ。業種別では建設業が70%を超える半面、水産・食品加工や旅館・ホテルは30%前後にとどまる。

<課題が多様化>
 水産関連を中心に多くの事業者が被災した気仙沼市。気仙沼商工会議所の専務理事加藤正禎さん(62)は「グループ化補助金で再スタートし、経営が順調な業者は少数派。多くは苦戦が続いている」と明かす。
 市内では約800事業者がグループ化補助金を申請。復旧にこぎつけた事業者も多くは販路縮小や人手不足、漁業の水揚げ減など重い課題を抱えたままだ。
 補助金で設備を復旧させても、想定した魚種の水揚げが環境の変化などで減り、別の魚種向けに設備更新を希望する水産業者もいる。「時間の経過とともに、既存の支援制度では対応しきれない課題が出てくる」と加藤さんは先行きを懸念する。
 国は14年度以降、水産加工の販路開拓に計57億円、人材確保に計20億円を充てるなど手を打つが、「課題は多様化、複雑化している」(宮城復興局)。支援制度の周知や、専門家によるコンサルティングに力を入れながら、被災企業全体の底上げを模索する。
(報道部・小沢邦嘉、大船渡支局・坂井直人)

[グループ化補助金]東日本大震災で被災した中小企業や小規模事業者のグループを対象に、施設や設備の復旧費を最大75%補助する制度。1企業当たり15億円を上限に国が50%、県が25%を補助する。企業の私有財産は本来、災害時に公費で復旧する対象外だったが、国は連携して復興計画を作成した事業者グループを支援し、被災地復興につなげようと11年に制度を新設した。


2018年09月14日金曜日


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