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<変わる介護食>高齢県・秋田(上)期待 地元企業参入の好機

青マークを取得した豚軟骨入りのカレーなど白神屋の3商品。介護食のイメージを覆す食品が認定されている=能代市

 全国最速で高齢化が進む秋田県で、介護食にまつわる取り組みが活発化している。「スマイルケア食」と呼ばれる新しい介護食の普及が進み、独自開発した食品を飲食店で普及させる市民団体も始動した。国が推進する在宅医療・介護で重要な役割を果たすと期待される介護食。食べる幸せを人生の最期まで味わえる社会を目指し、模索を続ける現場から展望を探った。
(秋田総局・鈴木俊平)

<認定は全国最多>
 介護食市場にいま、日常の食卓で見慣れた食品が次々と参入している。
 食品販売の白神屋(能代市)の園部精一郎社長は驚きを隠さない。「まさか介護食品になるなんて考えもしなかった」。地元の食文化を代表する豚軟骨を使ったカレーやハンバーグなど3商品が2月、介護食品として「お墨付き」を得た。
 農林水産省が推奨するスマイルケア食は加齢や病気で食べる力が弱まる高齢者ら向けに、一定以上の栄養価や軟らかさなどの条件を満たした食品が認定される。園部社長は「元々は地域の特産品だが、高齢化社会を考えると介護食は良いアピール材料だ」と語る。
 スマイルケア食は8月現在、全国29団体の122点が認定され、うち秋田県は8団体28点と全国最多を誇る。サバの缶詰や豚の角煮をはじめ、揚げかまぼこなどラインアップは幅広い。
 背景には「高齢県」を逆手に取り、健康増進と企業の事業拡大を図ろうとする秋田県の戦略がにじむ。
 県や県内企業は2017年度、全国下位に沈む食料品出荷額の底上げにつなげようと「あきたスマイルケア食研究会」を設立。需要が伸びると予想される介護食分野への参入を地域企業に促し、潜在力の掘り起こしに力を注ぐ。
 19年度以降は首都圏の物流業者と連携し、アンテナショップやスーパーへの出荷拡大を検討する。県うまいもの販売課は「高齢化は日本全体の課題。全国を市場と捉えたい」と話す。

<「食文化生かす」>
 待ち受けるのは大手との競合。差別化や販路確保など企業努力が一層必要だ。
 「青マークではとても市場で戦えない」と指摘するのは、農業生産法人あぐりこまち(秋田市)の渡辺健社長。県産米のおかゆ8種類が栄養補給が必要な人向けの青マーク認定を受けている。だが「低栄養者向けでは介護食品と打ち出しにくい」と明かす。
 スマイルケア食の認定商品のうち9割を青マークが占めている。かむことや飲み込みに問題がある人向けの黄、赤の両マークを得るにはJAS規格取得など条件が厳しくなり、足踏みする企業が多いとみられる。
 黄マーク取得に向け自社工場のJAS規格の申請を準備する渡辺社長は「地場産品を取り入れた特色ある新商品を開発し、差別化を目指す」と意気込む。
 国は将来的に介護食市場が3兆円規模にまで成長すると推計する。県総合食品研究センターの松井ふゆみ研究員は「秋田には介護食に生かせる豊富な資源がある。地域の食文化を守ってきた地元企業にこそ商機があるはず」と見据える。

[スマイルケア食]農林水産省が定めた介護食の規格。100グラム(または100ミリリットル)当たりエネルギー100キロカロリー、タンパク質8.1グラム以上をそれぞれ含む。青、黄、赤の3色のマークで分類され、青は低栄養の人、黄はかむ力が衰えた人、赤は飲み込む力が弱い人向け。2018年8月現在、認定数は青110、黄3、赤9。


関連ページ: 秋田 社会

2018年09月18日火曜日


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