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<週刊せんだい>里親家庭 健やかな育ちの場(3)巣立ち 応援する社会に

里親家庭や児童養護施設で育った若者たちへの支援について考える企業や団体向け懇談会で講話する小林代表理事=仙台市青葉区の市青年文化センター
草間吉夫(くさまよしお)1966年茨城県生まれ。東北福祉大大学院博士課程修了。家庭の事情により生後間もなくから高校卒業まで乳児院と児童養護施設で育つ。95年に松下政経塾に入塾し、要保護児童家庭の支援方法を研究。2006年から茨城県高萩市長を2期務める。内閣府子供の未来応援国民運動アドバイザリー。厚労省社会保障審議会審議員。

◎自立へ/住まいや職探し悩み切実

<市がサポート事業>
 里親家庭や児童養護施設で育ち、自立の時期を迎えた仙台市内の若者から、切実な悩みが寄せられる。
 「アルバイトでためてきたお金を実親がせびる」「アパートや携帯電話を契約したいが、保証人になってくれる人がいない」「進学したくて奨学金を借りたとしても、将来きちんと返済できるか不安だ」
 施設や里親の元を離れる際につまづきやすい若者を支えようと、市が2016年7月から取り組んでいる児童養護施設等入所児童就業支援・アフターケア事業で対応した相談例だ。
 この事業は、自立を目指す中学生から25歳前後までが対象。NPO法人チャイルドラインみやぎと一般社団法人パーソナルサポートセンター(ともに青葉区)の共同体が、市の委託を受け、展開している。内容によっては弁護士にもつなぐ。
 相談のほか、児童養護施設に出向き、家計管理やインターネットの適切な使い方、妊娠・出産などをテーマにした講話会も実施。市内企業の職場見学・体験や行政窓口への同行支援にも取り組む。昨年度は講話会を25回、職場見学・体験を16回実施し、約130人の参加があった。
 宮城県も昨年12月に同様の事業を始め、同じ共同体が受託している。

<早期相談呼び掛け>
 生みの親の元で暮らせない子どもたちは、満18歳まで(高校卒業までなどに延長できる)に施設や里親家庭から独り立ちしなくてはならない。16年春に卒業した全国の高校生の進学、就職状況は表の通り。親元で育った高校生に比べ、就職を選んだ割合が高い実態が分かる。
 共同体の責任者で、チャイルドラインみやぎの小林純子代表理事によると、相談内容は住まい探しに関するものが目立つ。未成年者の場合には、親権者が保証人にならないと、不動産業者から契約を断られるケースがほとんどという。生活費や仕事上の悩みも多く寄せられている。
 住居が長期間決まらず、職を見つけられずにいると、就業意欲の低下にもつながりかねない。小林さんは、円滑に新生活に移れるよう、早めの相談を呼び掛けている。
 一般的には、子どもは親に学費やアパート契約、生活費など多くを頼りながら、社会人への階段を上っていくのが当たり前。「それが一切できない彼ら彼女らのことを、地域社会全体がもっと理解し、応援してあげてほしい」と小林さんは願う。

[仙台市児童養護施設等入所児童就業支援・アフターケア事業]
支援を必要とする若者はもちろん、里親からの相談も受けている。連絡先は022(341)7062(平日午前10時〜午後5時)。メール相談はyougo_af@shirt.ocn.ne.jp。活動については、年3回発行の会報「つばさ」(ホームページにも掲載)で広報している。


◎公的資格の創設検討を/東北福祉大特任教授 草間吉夫(くさまよしお)氏

 生みの親元で暮らせない子どもの支援を研究する東北福祉大の草間吉夫特任教授(52)に、里親制度の現状と展望を聞いた。

 −昨年8月、厚生労働相の検討会が「おおむね5年以内に3歳未満の里親委託率75%以上を実現」などとする数値目標に踏み込んだ新しい社会的養育ビジョンを掲げた。

 「新ビジョンの方向性には賛成です。社会的養護を必要とする子にとって最も望ましいのは、施設でもグループホームでもなく、夫婦がいて自宅がある里親だと思う。家庭での育ちを保障してあげることが大切だ」
 「都道府県によって、里親委託の取り組みに大きな差が出ているのが実情。数値ありきで急ぎ足になると、子どもと里親のミスマッチが起こりかねない。地域性を考慮し進めるべきだ」

 −宮城県は今、里親委託推進に積極姿勢で臨んでいる。

 「施設で暮らす子どもの6割は虐待を受けた経験があり、3割は何らかの障害があるとされている。専門的なケアを必要とする子が増えている」
 「ケアニーズに応えられる里親を本気で増やすなら、児童福祉の職場経験などを条件に、例えば『里親士』といった公的資格制度を創設してはどうだろうか。施設の主任職員並みの職業対価も保証すべきだろう」

 −委託推進の中、乳児院や児童養護施設の今後の役割は。

 「施設の利点は、施設長や保育士、事務員、調理員ら多くの人たちの目があること。子育てをシェアできて、養育の質を一定程度担保できる」
 「里親家庭で、夫婦の不和や虐待などの問題が生じないとは限らない。里親は、担当窓口である児童相談所に相談することをためらいがちだ。乳児院や児童養護施設が、豊富な経験や資源を生かして、里親を支援するフォスタリング機能を担っていくことが求められる」


関連ページ: 宮城 社会

2018年09月20日木曜日


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