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<被災地 最後の一人まで>伴走型支援の今(上)生活再建支援員継続訪問 課題引き出す

被災者の健康相談に乗る岩井医師(左から3人目)。企画した村上さん(同2人目)は個々の被災者の課題に向き合い続ける

 被災者個々の事情に応じ、既存の災害支援制度と福祉の視点を組み合わせた伴走型支援「災害ケースマネジメント」が注目されている。東日本大震災の際、被災者が支援の網から漏れないよう一部自治体や支援団体が取り入れ、国内で相次ぐ大災害の現場へと広がっている。東北の被災地と、自治体で初めて本年度に制度化した鳥取県の現状を探った。(石巻総局・氏家清志)

<草の根活動>
 「家の中で肩をぶつけてしまって」
 「ちょっと手を上げてみて。大丈夫。熱い風呂やお酒は避けてくださいね」
 8月下旬、気仙沼市最知南最知の応急仮設住宅団地の談話室。体の不調を訴える住民を、岩井亮医師(54)が丁寧に対応した。
 横浜市で整形外科クリニックを営む岩井医師は、2012年から気仙沼市で定期的に健康相談会を開く。ボランティアの活動は150回を数え、今は全国の看護師や整体師、理学療法士らが協力する。
 相談会を企画したのは、同市で独自に被災者支援を続ける村上充さん。震災直後から仮設住宅を回り、被災者個々の悩みや困り事の解決に奔走してきた。
 「お金がかかるから受診を控えている」「仮設住宅に来てくれる医師はいないだろうか」
 村上さんは住民から聞いた話をツイッターなどで発信し続けた。医療関係者が反応し、次第にネットワークが生まれた。市立本吉病院の医師による訪問健康相談も、12年から週1回のペースで続いている。
 気になる症状の相談者には市内の病院での受診や検査を勧め、重病の早期発見につながったこともある。岩井医師は「つなぎ役の村上さんの存在は非常に大きい」と話す。
 村上さん自身も自宅が津波で浸水した。「小回りの利く地元の人間だからこそ、被災者のさまざまなニーズを把握できる」と草の根活動の意義を強調する。
 災害ケースマネジメントでは村上さんのように被災者を継続して訪ね、抱える問題を聞き取る存在を「生活再建支援員」と呼ぶ。

<復興に一役>
 国内で、災害ケースマネジメントの先駆けと言われているのが仙台市だ。市は12〜13年、市内の全仮設住宅約1万戸を対象に訪問調査を実施した。
 市は生活再建支援員をシルバー人材センターに委託。住宅再建の見通しや就労、健康状態を一人ずつ聞き取った。課題が多い世帯は訪問を増やした。支援員の村井克之さん(75)は「口を挟まず、被災者の生の声を市につなげることに徹した」と振り返る。
 集まった情報は市や支援団体でつくるワーキンググループで共有し、一人ずつの生活再建計画を立てた。
 「信頼関係を構築することで本当の課題を聞き取れた。復興に果たした役割は大きい」(市被災者生活支援室)。同市では、ほぼ全ての仮設住宅入居者が5年以内で退去できた。
 災害ケースマネジメントに詳しい「人と防災未来センター」(神戸市)の菅野拓主任研究員は「支援制度は申請主義だが、高齢の被災者が必要な制度を自分で見つけることは難しい。キーワードは伴走型だ」と指摘する。

[災害ケースマネジメント]被災世帯を戸別訪問して生活上の悩みや課題を聞き取り、個々の実情に応じた再建計画を作成して継続的に支援する手法。介護保険制度のケアプラン(介護計画)の発想を持ち込んだ。自治体や関係団体が協力し、必要に応じて法律家や保健師、建築士ら専門家が対応する。米国で2005年に発生したハリケーン「カトリーナ」の被害を受けて連邦緊急事態管理局(FEMA)が始めたとされる。


2018年09月23日日曜日


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