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被災地駆け墨痕に刻む 愛知の書家・波多野さん、久慈−松島340km走破 脚と筆で風化に抗う

宮城県松島町のゴール地点に到着し、仲間とハイタッチする波多野さん(左から2人目)=8月24日午後4時55分ごろ

 東日本大震災からの復興を願い、走り続ける女性書家がいる。愛知県春日井市在住の波多野明翠(めいすい)さん(57)。今年は久慈市から宮城県松島町までの約340キロを7日間かけて駆け抜けた。波多野さんは旅で感じたことを作品で表現し、来年の個展で披露する予定。脚と筆で記憶の風化に立ち向かう。
 「震災から10年の節目にもう一度走り、被災地の変化を見たい」
 波多野さんは8月24日夕、松島町のゴール地点で伴走者らに感謝し、早くも次の目標を語った。
 同月18日に久慈市を出発。岩手県大槌町の旧町役場庁舎、東松島市のJR仙石線旧野蒜駅など以前立ち寄った場所で、その後の変化を写真に収めた。
 岩手、宮城両県の17市町村を走破し、目にしたのは観光スポットや震災遺構の誕生と、生活基盤の復興の遅れとのギャップだった。
 波多野さんは「宮古市の道の駅や宮城県南三陸町の商店街がにぎわう一方、至る所で道路の工事があり、復興は道半ばだと改めて認識した」と語る。
 各日とも地域の友人らが伴走し、復興状況を説明した。最終日に一緒に走った同町の自営業鈴木由美子さん(50)は「被災地を見て走り、応援する活動に感激した」と言う。
 趣味のマラソンや書道で被災者を励ましたいと、被災地を初めて訪れたのは2012年。沿岸部を走るのは今回で5回目となる。
 書家として、象形文字をモチーフにした墨のアート作品を手掛ける。作品「ジャーニーラン」は「走」と「旅」の象形文字を組み合わせ、被災地を駆ける波多野さん自身の姿を表現した。
 東北を離れると、震災の風化を感じる。「愛知など東海地方では『今更行っても』と被災地訪問をためらう人が多い。震災遺構を巡る賛否の議論や建設の動きを知らない」
 被災地の風を切り、復興の足音を聞く。東北から遠く離れた地で、筆の力が見る人の心を揺さぶり、震災の記憶と被災地への思いを引き出す。
 波多野さんは「震災から7年半。作品をきっかけに、被災地以外の人に震災や復興を見つめ直してもらいたい」と話した。


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2018年09月23日日曜日


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