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<被災地 最後の一人まで>窮状データ共有し連携

被災者のカルテを読み込む伊藤代表理事。番号で整理され、悩みや課題が記されている

 被災者個々の事情に応じ、既存の災害支援制度と福祉の視点を組み合わせた伴走型支援「災害ケースマネジメント」が注目されている。東日本大震災の際、被災者が支援の網から漏れないよう一部自治体や支援団体が取り入れ、国内で相次ぐ大災害の現場へと広がっている。東北の被災地と、自治体で初めて本年度に制度化した鳥取県の現状を探った。(石巻総局・氏家清志)

◎伴走型支援の今(中)カルテ

<歩みも網羅>
 「月収は障害者年金の10万円程度。生活苦を確認」「年末から血圧が高くなって不安がある。血圧の薬が買えない。仕事が欲しい」
 被災者の現状と歩みが世帯単位の資料に網羅される。情報を随時更新し、最善で最短の支援を差し伸べる。
 東日本大震災で損壊した自宅に住む在宅被災者を支援する一般社団法人「チーム王冠」(石巻市)は、被災者のあらゆる情報を世帯ごとにまとめた資料を「カルテ」と呼ぶ。損壊判定や支援制度の利用状況、課題など項目は20以上に上る。
 チーム王冠が作ったカルテは石巻市と宮城県女川町の在宅被災者約2100世帯分と、県内のみなし仮設住宅入居者約600世帯分。うち約500世帯を現在の支援対象としている。
 カルテを基に、特に生活が困窮する約120世帯を割り出し、フードバンクの協力を得て食料援助をしている。伊藤健哉代表理事(52)は「もはやカルテがなければ活動できない」と話す。
 カルテはチーム王冠のメンバーや連携する弁護士らと共有する。その一人、山谷澄雄弁護士(仙台弁護士会)は「被災者の情報を次回訪問する別の弁護士に引き継げる。同じことを聞かれれば被災者も『またか』となるが、すぐに次の話に移れる」と評価する。
 カルテは震災直後の困難な支援環境から生まれた。
 チーム王冠は当時、救援物資が行き届かない自宅避難者への食料支援に奔走した。避難所の被災者と異なり、自宅避難者は支援の網から漏れていた。伊藤代表理事は「このままでは放っておかれる」と危機感を抱き、個人の窮状をデータ化した。

<対応迅速化>
 災害ケースマネジメントは被災者個々の暮らし向きや健康状態などを聞き取り、オーダーメード型の生活再建計画を作る仕組み。行政や支援団体、専門機関が協力して支援する。関係機関が迅速に対応する上でデータ化は欠かせない。
 仙台市が2012〜13年、市内の全仮設住宅約1万世帯を対象にした訪問調査では、生活再建支援員が聞き取った情報を、市職員が直ちにデータベース管理ソフトに打ち込んだ。
 市被災者生活支援室の高橋貞人室長は「情報量がA4判で40枚以上に上る世帯もあった。就労、アルコール依存症、精神障害など多様な問題があり、そこを解決しないと住宅再建に進めなかった」と振り返る。
 国は13年、災害対策基本法を改正し、市町村に被災者台帳=?=の作成を促した。被災者カルテとも呼ばれるが、行政支援の漏れや遅滞を防ぐのが目的で民間団体は原則共有できない。
 日弁連災害復興支援委員会の津久井進委員長(兵庫県弁護士会)は被災者台帳の必要性を認めつつ、「行政が公的支援目的で保存するデータではなく、被災者が支援者の助言を受けて生活再建を考えるための記録が必要だ」と提言する。

[被災者台帳]大災害時、住宅被害や避難先、支援金受給などの状況を行政担当者が一覧できる仕組み。支援制度の漏れや二重支給を防ぐのが狙い。記載項目のガイドラインを作り、全国的な整備を進めている。東日本大震災の際に罹災(りさい)証明書の発行が遅れた反省を踏まえ、制度化した。


2018年09月24日月曜日


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