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<東日本大震災>事業承継、被災企業でも 産業の持続的復興へ模索

ホヤの加工作業に立ち会う本田社長(中央)。親会社の支援を得て東海地方での市場開拓も目指す=石巻市流留の本田水産

 東日本大震災で被災した企業に、事業承継で地域産業の存続を目指す動きが広がりつつある。経営者の高齢化などから中小企業の休廃業が全国的な問題となる中、大手企業の傘下入りや若手への事業譲渡などで地域経済の持続的な復興につなげようとしている。(報道部・小沢邦嘉)

 水産加工業の本田水産(石巻市)は創業70年を迎えた2017年、東海や北陸でスーパーなどを展開するバローホールディングス(岐阜県)に全株式を売却し、子会社となった。社長の本田太さん(67)は「最大の理由は後継者。スムーズに経営を交代する体制を整えたかった」と語る。
 事業の柱は地元で仕入れたカキやサバなどの加工。震災の津波で設備などが被災し、一時は休業に追い込まれた。国の補助金などを活用して再建を果たし、従業員約80人の体制で売り上げを回復させてきたが、経営を継ぐ親族らの不在が長年の懸念材料だった。
 「長く続けられる安定した経営基盤をつくらないと浜全体の商売も成り立たなくなる」と地域の先行きを見据えた上で、3年ほど前に企業の合併・買収(M&A)の仲介や事業承継を手掛ける業者に打診。バロー社を紹介された。
 今春、将来の経営者候補となる人材がバロー社から出向してきた。本田さんは約5年後のトップ交代も視野に「バロー社と連携して宮城の食材を東海地方にも売り込み、市場をさらに開拓したい」と意気込む。
 食品卸売業かね久(多賀城市)の社長遠藤伸太郎さん(46)は14年、同社の前身である金久商店(仙台市)の70代経営者から事業譲渡を受けた。食品業界で勤務が長く、旧知の税理士から後継者不在に悩む金久のオーナーを紹介され、承継を決断した。
 飲食店などのニーズに応じ、100種以上の業務用パン粉を販売。金久時代から続く事業は顧客から根強く支持されている。遠藤さんは事業を継いだ後、食品メーカーと連携した新商品開発にも力を入れ、売り上げを伸ばしている。
 今年に入り、後継者不在に悩む複数の食品関連業者から承継を打診された。遠藤さんは「地域の小さな市場にも残すべき商品や技術があると感じる。さらに事業を引き継ぐかどうか、しっかり検討したい」と次の一手を模索する。

◎東北、増える休廃業 官民の経営支援が急務

 中小企業や小規模事業者の休廃業は全国で増えており、東北では東日本大震災後、件数が倒産の約5〜6倍で推移する。復興が道半ばの被災地では地域経済の衰退など深刻さの度合いが大きく、官民による支援が急務となっている。
 東京商工リサーチ東北支社によると、6県の休廃業と倒産の件数はグラフの通り。震災後、倒産は国の復興施策などで低水準にとどまっているが、休廃業は2012年をピークに2000件前後で推移し高止まりの状態が続く。
 休廃業の動向について東北支社は「震災後の12年に被災地を中心に急増した後、経営者の高齢化と事業承継の難しさを背景に各地で増加傾向にある」と分析。経営再建中の事業者が多い被災地では今後、さらに増える可能性もあるという。
 20年以降は団塊世代の経営者が70代となり、多くが引退時期を迎える。東北各県でも関係機関が危機感を強め、行政や商工団体、金融機関が連携した相談事業など事業承継に向けたサポートに乗り出している。


2018年09月25日火曜日


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