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<被災地 最後の一人まで>伴走型支援の今(下)ケース会議 再建プラン戸別に練る

鳥取中部地震の被災者の生活再建を目指し、関係者が世帯ごとに対応を検討したケース会議=鳥取県倉吉市の県中部総合事務所

 被災者個々の事情に応じ、既存の災害支援制度と福祉の視点を組み合わせた伴走型支援「災害ケースマネジメント」が注目されている。東日本大震災の際、被災者が支援の網から漏れないよう一部自治体や支援団体が取り入れ、国内で相次ぐ大災害の現場へと広がっている。東北の被災地と、自治体で初めて本年度に制度化した鳥取県の現状を探った。(石巻総局・氏家清志)

<官民で構成>
 70代女性。40代の息子と10代の孫2人と暮らす。息子は入院中。月収は女性のアルバイト料と年金の計約14万円。
 「家賃が低い県営住宅に移っても何ともならない可能性がある。孫の学資金などを考えると、息子が就労できるまで生活保護受給を考えた方がいいのでは」
 「息子さんの医療費もかかる。現状は生活保護の基準を下回っている」
 2016年の鳥取中部地震で被災した鳥取県倉吉市の県中部総合事務所で今月上旬、ケース会議が開かれた。地震を機に生活難に陥った世帯を一軒ずつ調べ、官民が集まって個別の再建計画を練る。この日の対象は14世帯。会議は2時間半に及んだ。
 県内で損壊した自宅に住むとみられる被災世帯数は約1000に上る。地震から丸2年たった今も家屋を修繕できず、倉吉市内では屋根にブルーシートが掛かった住宅が目立つ。
 支援制度の隙間で途方に暮れている被災者はいないか−。県は今年2月、「災害ケースマネジメント」を国内で初めて制度化した。
 創設した「生活復興支援チーム」は県の中部地震復興本部や住宅支援の担当課、関係市町村、民間支援団体で構成。戸別訪問で住宅再建の悩みや暮らしの課題を聞き取り、一人一人に合った再建プランを組み立てる。必要に応じ、建築士や保健師、弁護士ら専門家を県の負担で派遣する。
 県は全ての在宅被災世帯を戸別訪問し、4月以降、40世帯についてケース会議で取り上げた。家族構成、健康や就労の状態、生活上の悩みなどの情報を基に意見を交わし、16世帯が解決へ動きだしている。

<国も参考に>
 県中部地震復興本部の西尾浩一事務局長は「いかにきめ細かく世帯ごとの状況を聞き取り、生活状態に応じた再建プランを提供できるかが課題になる」と話し、制度の磨き上げを図る。
 鳥取県の制度のベースは東日本大震災にあった。震災後、在宅被災者支援を続ける一般社団法人「チーム王冠」(石巻市)と仙台弁護士会による石巻市での実践や、仙台市が取り組んだ全仮設住宅への訪問調査を参考にしたという。
 仙台市の手法は16年の熊本地震の被災地でも取り入れられた。想定される首都直下型地震や南海トラフ巨大地震に備え、国も新たな動きを取り込もうとする。
 東日本大震災からの復興を巡り、議論が交わされた1月の参院予算委員会。安倍晋三首相は「政治がリーダーシップを取って省庁を集め、被災者一人一人のニーズに応えることが求められる。仙台市の事例を全国展開したい」と強調した。
 「チーム王冠」の伊藤健哉代表理事は「在宅被災者を含めた『最後の一人まで』を実現できる唯一の方法が災害ケースマネジメントだ。誰もが被災者になり得る時代、被災者を救う手だても進化させなければならない」と力を込めた。

[鳥取中部地震]2016年10月21日、鳥取県中部を震源地に発生。倉吉市など1市2町で震度6弱を観測した。マグニチュードは6.6。内閣府によると、鳥取、岡山の両県と近畿2府県で計30人がけがをした。鳥取県内は住宅約1万5000棟が被害を受け、このうち倉吉市内は9000棟以上に上った。


2018年09月25日火曜日


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