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開館まで1年切ったのに…陸前高田「津波伝承館」具体像見えず 肝心の展示内容、運営形態未定

建設中の津波伝承館が入居予定の施設

 岩手県が陸前高田市に整備する「東日本大震災津波伝承館」の具体像が、いまだに見えてこない。愛称は「いわてTUNAMIメモリアル」と発表したが、開館まで1年を切った現在も肝心要の展示内容や運営形態の詳細は「まだ調整中」(県まちづくり再生課)だ。震災の伝承に取り組む語り部らは「継続的な検証調査」や「反省点の発信」を強く求めている。(大船渡支局・坂井直人)

 伝承館は「高田松原津波復興祈念公園」内に開設し、震災の事実と教訓を国内外や次世代に伝える。岩手県内各地の震災関連施設に観光客らを誘導する「被災地ビジターセンター」の役割も担い、県は2019年9月20日開幕のラグビーワールドカップ日本大会前の開館を目指している。
 実施設計によると、東北地方整備局(仙台市)の震災当時の災害対策室を再現して初動の取り組みなどを紹介。被災者の証言や各種データを展示し「なぜ逃げなかったのか」を掘り下げて独自性を発揮したい考えだ。
 陸前高田市観光物産協会で語り部ガイドを務める紺野文彰さん(67)は「単なる行政のPR施設にしてはならない」とくぎを刺し「復興の過程も含めて失敗例もきちんと展示してほしい」と要望する。
 県のパブリックコメント(意見公募)にも「後世に向けて継続的に検証を深めてほしい」「死者が出た指定避難所を展示内容に含めたらどうか」「要配慮者への対応を調査し、展示すべきだ」といった意見が寄せられた。
 ちなみに阪神大震災の教訓などを世界に伝える兵庫県の「人と防災未来センター」(神戸市)の場合、単なる資料展示にとどまらず、施設の機能は多岐にわたる。
 しかし岩手県は「施設の規模が違う」と強調。展示する写真や動画、物品の提供を呼び掛けたが、寄せられたのは写真が1枚だけだった。県の構想に関心が集まっているとは到底言い難い。
 施設を直営するか民間団体などに管理を委託するかも未定だ。復興政策に詳しい岩手大の井上博夫名誉教授は「伝承施設である以上、展示して終わりではない。施設長も専門的知識を持って情報収集、分析できる人が望ましい」と助言する。
 その上で「どういう理念で何を伝えたいのか、もう少し県民に情報発信すべきだ」と指摘する。

◎「阪神」「中越」の伝承施設は…それぞれの災害の特徴踏まえ教訓伝える

 阪神大震災(1995年)と新潟県中越地震(2004年)の被災地では、それぞれの災害の特徴を踏まえた本格的な伝承施設が、教訓を伝え続けている。
 02年4月に開館した阪神大震災の「人と防災未来センター」は、兵庫県が国の支援を受けて整備し、公益財団法人「ひょうご震災記念21世紀研究機構」が運営する。センター長には防災減災や危機管理が専門の河田恵昭関西大特別任命教授が就いた。
 市民約140人が展示解説のボランティアとして働き、このうち約40人は自らの震災体験を伝える語り部だ。震災関連資料の収集は今も続いており、計19万点を保管している。
 新潟県では11年10月、長岡市と小千谷市の地震遺構などの公園3カ所、施設4カ所で構成する「中越メモリアル回廊」ができた。産学官民でつくる公益社団法人「中越防災安全推進機構」が整備、運営する。
 それぞれの施設が被害や復興の伝承、防災学習といったテーマを決めて活動しており、視察や防災教育プログラムの作成も請け負っている。

[東日本大震災津波伝承館]国と岩手県、陸前高田市が共同整備する道の駅内に設置。延べ床面積は約1480平方メートルで、展示制作費は約6億4100万円。


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2018年09月26日水曜日


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