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<福島知事選 課題の現場>「仕方ない、でも…」不安募る避難者 仮設住宅無償提供、終了時期公表

原発事故の避難者向け仮設住宅。退去が進み、空き室が目立つ=福島市

 「そろそろ折り合いを付ける時かな」。福島県浪江町から避難する斎藤基さん(67)がぽつりと語る。

<諦めの声広がる>
 東京電力福島第1原発事故から7年半が迫った8月末、福島県は避難者向け仮設住宅の無償提供の終了時期を公表した。浪江、富岡両町は2020年3月と示された。
 斎藤さんは二本松市内の仮設に暮らす。「いつかは自立しなきゃいけない。来年3月には仮設を出ようと思う」。自宅は帰還困難区域にあり戻れない。同市に家を再建する方向という。
 被災者の間で、県の方針に対する猛烈な反発は起きていない。「自宅には帰れないが、しょうがない」「いつまでも暮らし続けるわけにはいかない」。福島市内の浪江町民向け仮設では、諦めの声が多かった。
 ただ、退去後の暮らしに不安は募る。
 福島市にある飯舘村の避難者向け仮設住宅。夫と2人暮らしの佐藤隆子さん(79)は、村内に11月に完成予定の村営住宅への入居申し込みを考えている。
 村の避難指示は昨春、一部を除き解除された。解除地域に自宅があった避難者の仮設終了は来年3月。浪江町より1年早い。
 佐藤さんは「やっぱり古里がいい」と言うが、買い物や医療など福島市の便利さが身に染みている。「村に帰って運転できなくなった時を考えると心配。安心して帰れるわけでない」
 循環バスの運行、診療所の再開…。自治体は帰還環境整備に注力するが、不安解消に至っていない。

<期限ありき批判>
 行政支援がさらに届きにくいのは、借り上げのアパートやマンションなど、みなし仮設に住む避難者だ。
 県によると、20年3月末までに無償提供が終わる富岡、浪江、葛尾、飯舘の4町村の避難者では、県内のみなし仮設居住者が4055人に上る。通常の仮設住民の約8倍。他に県外のみなし仮設の住民もいる。無償提供終了後も住み続けるなら家賃が発生する。
 福島県川俣町の一戸建てに夫や息子夫婦、孫と避難する飯舘村の女性(68)は「(無償提供が終わる)来年3月には家の確保が間に合いそうにない」と語る。
 飯舘に戻らず町内に家を建てるつもりだが、土地を購入できていない。来春以降は「どうしたらいいか、不安だ」と打ち明ける。
 県は今後、みなし仮設の避難者を対象に住まいに関する意向調査に入る。県生活拠点課は「必要に応じて戸別訪問し、住まい確保を支援したい」と説明する。
 避難者の暮らし再建は県の重要課題の一つ。いわき明星大の高木竜輔准教授(地域社会学)は「仮設終了は、避難者の自立した生活が大前提。期限ありきで進めることがあってはならない」とくぎを刺す。(福島総局・阿部真紀、高田奈実)

◎自治体側は帰還に期待

 福島県が2020年3月末までの仮設住宅の無償提供終了を打ち出したことに、地元自治体側はおおむね容認の姿勢を示す。
 今年4月時点で借り上げを含め県内外に約1800戸の仮設住宅を抱える浪江町。生活支援課の居村勲課長は「生活再建の見通しが立っていない入居者もいる」と説明。ただ「無償提供は永遠に続くわけではない。あと1年半で道筋を付けられるように支援したい」と語る。
 自治体側の容認の背景には、終了時期の明示が帰還につながるのではないかとの思いもある。避難指示解除後も帰還が進まない中、仮設入居者が「避難」から「自立」へと軸足を移し、一部でも古里に戻ることを期待する。
 ある自治体の担当者は「区切りを設けることで、入居者は生活再建を切実に考えるようになる。その結果、帰還が増えてくれればいい」と言う。
 だが、仮設住宅を退去後に帰還する例は少ないとの見方もある。別の担当者は「原発事故からもう7年半。避難先で基盤を築いた避難者に戻ってもらうのは容易ではない」と語る。

[福島県の仮設住宅の無償提供終了]南相馬市、川俣町、川内村の旧避難区域と、帰還困難区域を除く葛尾、飯舘両村からの避難者は2019年3月末で終了する。葛尾、飯舘両村の帰還困難区域と富岡、浪江両町の終了は20年3月末。これまでに楢葉町が18年3月末、県内各地からの自主避難者向けが17年3月末に終わっている。大半が帰還困難区域の大熊、双葉両町の終了時期は今後検討する。


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2018年09月28日金曜日


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