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<東北の本棚>「負の連鎖」に向き合う

◎家族医 小松信明、郷好文 著

 山形市の心療内科医小松信明さんの元には、親の過度な干渉や虐待、育児放棄などで心を傷つけられた人たちが訪れる。本著は患者とその家族が心を通い合わせることで回復に向かった七つの症例を紹介。医療ライターの郷好文さんが、診療記録や患者への聞き取りを基に構成した。
 20代のヒロトさんは高1の冬、不登校になった。原因は母親の学歴コンプレックスにあった。父親を亡くして進学を諦めた過去が、息子への厳しいしつけや勉強の強要につながっていたのだ。母親が子どものありのままを受け入れることで、ヒロトさんは9年後、再び高校に通い出す。
 自己愛が強い母親に抑圧されて育った40代のユキさんは、パニック障害、そううつ病と診断された。母親との関係を振り返るうちに、「甘えん坊の男の子」や夫に罵詈(ばり)雑言を浴びせる「要求する人」など9の人格が現れたが、小松さんや夫に幼い頃の不安や怒りをはき出すことで症状が安定していった。
 「摂食障害や不登校など、心因性の精神疾患の多くは幼少期の母親の愛情不足に起因する」と考える小松さんは、患者の母親にもカウンセリングや精神分析を行う。残念ながら多くは原因が自分にあると認めず、治療を拒むこともあるそうだ。彼女たちもまた、母親から愛情を十分にもらえなかった被害者なのだ。
 親子間の負の連鎖を断ち切ることは容易ではない。だが、傷ついた分だけ家族が時間をかけて向き合えば、光は必ず見えてくる。「親ってあったかいでしょう」「ハイ」。小松さんと元気になったヒロトさんのやりとりが心を打つ。
 人間と歴史社03(5282)7181=1728円。


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2018年09月30日日曜日


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