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<福島知事選 課題の現場>震災遺構 進まぬ議論 市町村手探り、県は消極的

津波で被災したまま取り残されているマリーンハウスふたば=昨年4月、福島県双葉町
マリーンハウスふたばの内部。津波の跡が生々しく残る

 巨大津波に耐えた建築物が、人けのない海水浴場に取り残されている。
 東京電力福島第1原発事故で全町避難が続く福島県双葉町。「マリーンハウスふたば」は震災遺構としての保存方針が決まらず、中ぶらりんの状態が続く。

<「残せるのなら」>
 環境省の「快水浴場百選」にも選ばれた浜辺で、町営の海の家として愛された。東日本大震災では津波が4階の建物の3階まで押し寄せ、4階に避難した住民1人の命を救った。
 「津波の脅威を伝える貴重な施設。残せるのであれば残したい」。町秘書広報課の橋本靖治課長補佐は言うが、課題は山積みだ。
 一帯は原発事故に伴う帰還困難区域で自由に立ち入りできない。除染土壌などを保管する中間貯蔵施設の建設予定地になっているため、環境省との調整も必要になる。
 橋本さんは「調べれば調べるほど課題が浮かび上がってくる状態だ」と語る。

<15メートルの津波直撃>
 福島県内は震災遺構の議論が遅れている。原発事故後の生活再建が進んでいないことに加え、住民が避難で地元を離れ、保存の是非を話し合う機会がない。
 浪江町の請戸小。15メートルの津波直撃の跡が生々しく残る。町は10月、宙に浮いたままとなってきた校舎保存の議論を始める。町民や専門家らによる検討委員会が課題などを話し合い、来年1月にも町に提言する。
 町内の避難指示が一部で解除され、住民が戻ってきたこともあり、ようやく話し合える環境になった。町教委の担当者は「残せば維持費が必要になる。最適の結論を導けるよう、しっかり議論したい」と言う。

<保存不能の恐れ>
 市町村が手探りを続ける一方で、福島県の対応は消極的だ。復興祈念公園の整備計画はあるが、震災遺構に関しては「保存が決まるまでは基本的には各自治体が取り組むべき問題」と生涯学習課。遺構候補を洗い出し、戦略的に議論に導いていく方針もない。
 津波被害が大きかった宮城県は2013〜14年度に有識者会議を開催。南三陸町防災対策庁舎など9施設について「保存する価値がある」「保存する意義は認められる」とする総合評価を導いた。岩手県も16年度に被災市町村にヒアリングをし、たろう観光ホテル(宮古市)や一本松(陸前高田市)など11カ所の遺構があることを確認している。
 福島県でこのまま議論が進まなければ、建物が解体されてしまったり、腐食が進んで保存が不可能になったりするケースが出てくる恐れもある。
 震災遺構の問題に詳しい福島大うつくしまふくしま未来支援センターの柳沼賢治特任教授は「原発事故の遺構も含め、保存するべきかどうか悩んでいる自治体は多い。県は悩みをすくい上げ、一緒に対応する姿勢を示してほしい」と話す。(福島総局・神田一道)

[福島の復興祈念公園]浪江、双葉両町約50ヘクタールの敷地に整備し、国営の追悼・祈念施設のほか、東日本大震災の脅威を後世に伝えるエリアを設ける。2020年度中の一部利用開始を目指す。隣接地には、東京電力福島第1原発事故との複合災害を伝えるアーカイブ拠点施設を県が建設する。今年7月に公表した基本計画では、周辺のマリーンハウスふたばや請戸小などを結ぶ巡回ルートの検討などが明記されている。


2018年10月03日水曜日


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