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<阿武隈川物語>(15)ハードとソフト一体で

応急担架で負傷者を運ぶ訓練に取り組む児童たち=郡山市安積一小(写真は一部加工しています)
阿武隈川(手前)に注ぐ逢瀬川の合流地点。バックウオーターが起きかねない場所の一つだ

◎第3部 治水(4)豪雨対策

<高校を避難所に>
 児童たちが2本の棒に毛布をくるんで応急担架を作り、負傷者役の子を搬送した。住民も一緒にバケツリレーなどを体験した。
 防災の日の9月1日、阿武隈川沿いの郡山市安積町の自主防災組織連絡会と安積一小(児童548人)が同校で防災訓練を行い、約900人が参加した。
 連絡会は市の指定避難所に加え、地元の私立高校に要請し、避難所として協力してもらう態勢を整えた。八代実会長(75)は「水害に悩まされてきた安積は防災意識が高い」と誇る。
 市内で2人が犠牲になった1986年の「8.5豪雨」のとき、八代会長は阿武隈川支流の逢瀬川沿いに立地する食品加工場の工場長をしていた。堤防決壊で工場が孤立し、妊娠中の女性を自衛隊ヘリで救出してもらった。自らもボートで救助された。八代会長は「命を守ることが最優先だ。行政と連携し、日頃から備えたい」と実感を込める。
 市も水害への備えの意識は高い。2014年に「ゲリラ豪雨対策9年プラン」を策定し、調整池や雨水を一時的に地下にためる貯留管の整備、リアルタイムで浸水状況が分かるハザードマップのインターネット配信など、総合的な対策に取り組む。国土交通省の「100ミリ安心プラン」に東北で初めて登録された。
 品川万里市長は「130の河川と安積疎水が阿武隈川に注ぐ郡山は、バックウオーターが懸念される場所が少なくない。水害対策は市政の一丁目一番地だ」と強調する。

<水位で避難情報>
 阿武隈川の水位によって避難情報を発令する基準を数値化したのも、市が全国初だ。昨年10月の台風でも避難指示を出した。
 品川市長は「避難情報に『空振り』との声はなく、市民に理解していただいている。インフラ整備によるリスク低減と適切な情報提供に努め、市民には万一の際の心積もりをお願いしたい」と訴える。
 進行する気候変動に、ハードだけで水害を防ぐには限界がある。そう国も方向を転換したのが「水防災意識社会再構築ビジョン」だ。阿武隈川流域でも上流の福島県、下流の宮城県で、それぞれ減災対策協議会が設けられ、広域で避難者を受け入れる体制づくりなどの議論が始まった。
 東北地方整備局福島河川国道事務所の小浪尊宏所長(42)は「従来の想定を超えた降雨が起こる可能性があり、ハード、ソフト一体で住民の命と暮らしを守らなければならない。郡山市の意識は高く、流域の良いモデルとして発信を続けてほしい」と期待する。

[水防災意識社会再構築ビジョン]宮城県大和町の吉田川や鬼怒川(茨城県など)が氾濫した2015年9月の「関東・東北豪雨」を受けた減災構想。国直轄河川109水系の730市町村で20年度までをめどに、堤防強化や河道掘削など約3000キロのハード整備と、タイムライン策定などソフト対策を一体的に行う。阿武隈川流域のハード整備は約55キロ。


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2018年10月05日金曜日


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