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<阿武隈川物語>(16)伝統と誇り 団員継承

舟こぎ競争で力を合わせる消防団員。本宮市の夏を彩る伝統行事だ
1986年の「8.5豪雨」時、舟で水防活動に当たる消防団員たち(東北地方整備局提供)

◎第3部 治水(5完)水防活動

 水かさが増した阿武隈川を、長さ約12メートルの和舟5隻が進む。各舟に消防団員が5人ずつ乗り組み、懸命に竹ざおをこぐ姿に、観客が声援を送った。

<市民守る使命感>
 過去約100年間に30回以上の洪水が起き、「水害のまち」と呼ばれた本宮市で8月16日、市消防団の舟こぎ競争があった。水防訓練の一環で、戦後から続くとされる伝統行事だ。水位が95センチを超えると中止され、開催は3年ぶり。この日も水位が90センチあり、ぎりぎりでの実施だった。
 市消防団の吉沢直哉船舶部長(47)は「いざというとき、市民に最も身近で頼られるのが消防団だ。使命感を持って技量を磨きたい」と意気込む。
 6、7人が乗れる救助用ゴムボートに対し、和舟はこぎ手3人と避難者約10人が乗船できる。1986年の「8.5豪雨」で、冠水のため孤立した病院から患者や職員を救い出すのに活躍した。
 「舟は昭和初期からあり、41年の洪水でも出動したと聞かされた。櫂(かい)を上手に操った先輩がいた」。そう語るのは元消防団長の川名栄さん(72)。「8.5豪雨」に消防団幹部として対応した。
 当時は支流の安達太良川に架かる本宮橋に土のうを積んだが、一気に水が上がって決壊したという。川名さんは「まだ消防無線が配備されておらず、現場の把握に時間がかかったのが悔やまれた」と振り返る。その上で「自然は絶対に征服できない。最前線に立つ団員は自分の身を守りながら活動してほしい」とエールを送る。
 98年8月の豪雨被害を受けた国の「平成の大改修」で、市内の阿武隈川西岸に堤防が整備された。この20年間で舟の出番はないが、市消防団は船舶部員の育成を続ける。
 若手が小型船舶免許を取得する際、費用の一部を補助。団員541人のうち船舶部員は約50人に上る。市消防団は阿武隈川流域の消防団で唯一、条例定数を満たす組織でもある。

<安全安心が大切>
 本宮市は東洋経済新報社が毎年公表する「住みよさランキング」で2009年から県内首位に立つ。国分宏明消防団長(55)は「住み良いまちに最も大切なのが安全安心で、消防団は市民を守るのに一役買っている」と強調。「阿武隈川は本宮のシンボル。荒れたときは手ごわいが、普段の景観は本当に素晴らしい。うまく付き合いたい」と語る。
 水害のまちから住み良いまちへ。本宮の歩みを市民の自助意識が支えている。
(角田支局・会田正宣)

[阿武隈川流域の消防団] 4月1日現在の消防団員数は、福島県内の26市町村が計1万7181人で、条例定数に対する充足率は92.2%。宮城県内の12市町は計4241人で、充足率86.1%となっている。


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2018年10月06日土曜日


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