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<東北の本棚>市民が慕った亡き神父

木を植えた人・二戸のフランシスコ 黒沢勉 著

 二戸市内で長年布教に携わり、2004年に89歳で亡くなったゲオルク・シュトルム神父は、植樹や童話の制作などを通じて市民から慕われ、今でも語り草になっている。自然と平和を愛した中世の聖人になぞらえて「二戸のフランシスコ」と名付けた著者が、人間像や思想の神髄に迫った。
 シュトルムさんは1915年、スイス生まれ。来日後の59年、二戸カトリック教会に赴任した。粗末な家屋で自給自足に近い生活をした。工事のため樹木が伐採された山を見て自然保護を思い立ち、各地に50種2000本の苗木を植えた。童話「子山羊(やぎ)とフランシス」などの著書がある。
 信者として長年親交があった著者は、書きためておいたシュトルムさんの語録や、知人らの思い出話を紹介する。「私は環境保護の運動家ではない。創造主の御業を輝かせたい」といった言葉から深い信仰心が読み取れる。
 教会を手伝った中野トシエさんの文章を収録。賛美歌に合わせて飼っていたヤギの鈴が鳴ったり、子ヤギの出産を祝ったりと、ほほ笑ましい光景が浮かび上がる。
 二戸市営球場の近くにはカエデや桜などを植えた傾斜地があり、著者は「シュトルム公園林」と呼ぶ。宮沢賢治は、愚直な青年によって整備された杉林が地域に貢献した短編童話「虔十(けんじゅう)公園林」を残した。シュトルムさんと賢治の思想を対比させる論考が興味深い。
 巻末にはシュトルムさんが作曲したバイブルソングスを掲載した。
 著者は1945年十和田市生まれ。岩手県内の高校教師や岩手医大教養部教授などを務めた。
 イー・ピックス0192(26)3334=2052円。


2018年10月07日日曜日


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