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<東日本大震災 復興人>命守る防災の種まく 亡き娘との約束胸に

広島県福山市であった第4回ビッグスマイルコンサートに参加する高橋さん(右から3人目)=9月23日

◎宮城県亘理町・笑顔広がれプロジェクト代表 高橋ひろみさん(53)

 「ひな乃ちゃん、みんなのことをお空の上から見守っています」
 9月25日、広島県福山市鞆町(ともちょう)。古い港町にある鞆こども園で、宮城県亘理町の高橋ひろみさん(53)が子どもたちに優しく話し掛けた。園を訪れるのは3度目。いつも5歳児を訪問する。同い年だった一人娘のひな乃ちゃんが東日本大震災の津波で亡くなったことを伝え、命の尊さを訴えている。
 高橋さんが訪れるようになって、園は緊急時の避難計画を常に点検するようになった。周りは狭い道ばかりだ。「地震時に計画通りにできるか分からない。最近、避難時に先発隊を出すことを決めた」。主任の片岡孝子さん(70)が言う。「防災には想像力が必要。わが子を失った高橋さんが教えてくれた」

 高橋さんは2011年夏、「笑顔広がれプロジェクト」を始めた。娘の笑顔と重ねた「ビッグスマイル」というヒマワリの種を防災メッセージとともに配る取り組みが、福山市とのつながりを生んだ。
 夫の光晴さん(50)とプロジェクトの思いを込めた歌「ひまわりおやくそく」を考え、CDを作った。15年、福山市で音楽活動をする小土井忠夫さん(65)がCDを手にし、「ひまわり−」を歌い継いで命の大切さを思うビッグスマイルコンサートを企画した。高橋さんも福山に駆け付けた。
 歌には「世界が変わっても、守りたい君との約束」という歌詞がある。
 震災の数日前。ひな乃ちゃんが、職場にいた高橋さんに「お守りが欲しい」と電話をかけてきた。仕事中の電話に驚きながら、「次のお休みでね」と話した。約束は、守れなかった。
 あの日、ひな乃ちゃんは通っていた宮城県山元町のふじ幼稚園でバスにいて津波に遭った。園は海から約1.5キロ。当初は娘が亡くなった経緯を懸命に知ろうとした。数カ月たって園の説明が尽くされたと感じた時、「自分も園と同様に津波を想定していなかった」と思うようになった。
 そんな折り、友人から「ひなちゃんの笑顔にそっくり」とヒマワリの種を贈られたのが転機になった。

 こども園を訪れた2日前、4度目のコンサートが福山市内陸部にある喫茶店「カフェ・ドゥ・ララ」であった。高橋さんは、歌に曲を付けたふじ幼稚園の鈴木信子園長(60)らと訪れた。
 店舗を夫と営む村田泰子さん(69)は元保育士。「命を見詰める活動を知ってほしい」と、こども園に高橋さんを紹介したのが村田さんだった。
 コンサートには80人余りが訪れた。高橋さんは来場者と「ひまわりおやくそく」を歌った。
 もう誰にもあんな思いをさせない。子どもたちの命を災害から守る。震災後、心の中で交わした亡き娘との約束が、高橋さんの背中を押し続けている。(亘理支局・安達孝太郎)


<描く未来図>想像力働かせ避難

 プロジェクトはふじ幼稚園と一緒に進めている。ヒマワリの種に添えるメッセージでは「場所に応じた防災計画・避難計画を事前に考えましょう」と訴えている。緊急時に身近な人がどう動くのか、すぐに想像できるようになったらいいと思う。人と人がつながり、防災への思いが広がってほしい。


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2018年10月11日木曜日


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