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<どうする登米の医療>(上)診療所休診 患者1000人超、他病院へ

診療所休診に伴い運行が始まった患者送迎バス。初日の利用者は1人にとどまった=8月1日、登米市登米診療所

 宮城県登米市の市立病院の医師不足と経営難が深刻だ。市は本年度、常勤医の確保ができず、運営する3病院4診療所のうち登米(とよま)、津山の2診療所を休止した。2005年の9町合併で新市が誕生して13年。合併前と同じ数の公立医療機関が存続する中、医師不足による収入減、非効率的な運営により、病院事業の累積赤字は150億円を超える。地域医療が崩壊しかねない登米市の現状を報告する。(登米支局・小島直広)

 市登米診療所が休診となった8月1日。「バス停」として開放された診療所待合室で、近くに住む82歳の女性がつぶやいた。
 「胃の調子が悪くてね、月1回お薬をもらいに来ていたの。ここ新しくてきれいで便利だったのに…。どうして休みになったの?」
 この日は、市が用意した他病院への患者送迎バスの初運行日で、女性は約20分かかる市豊里病院に通うためやって来た。

<人繰りがつかず>
 登米診療所は内科など4科。休診により患者1069人に紹介状が出され、約半数の531人が登米市民、豊里、米谷の市立3病院に、302人が登米町域の2カ所の開業医に移った。
 登米市は県内でも医師不足が最も深刻な地域だ。人口10万人に対する医師数は105人(2016年度県調査)。全国平均の251人、県平均の242人を大幅に下回る。
 登米診療所は医療法の規定で、常勤医1人を置かないと診療が続けられない。市は県の医師確保事業「ドクターバンク」を利用して16年度から2年間、常勤の内科医1人の派遣を受けてきたが、今年3月末で任期が切れた。昨年から県に再度の派遣を要請したが人繰りがつかなかった。
 市は4月から、他の市立病院の医師を同診療所に応援として派遣。内科を午前診療にしてしのいだが、応援医の勤務が加重になりすぎ「病院本体の診療に支障が出る」として、やむなく休診に踏み切った。

<地元からは反発>
 昨年度、同じく市立病院から応援医1人を派遣してきた津山診療所も、人繰りがつかず4月に休診した。
 登米診療所は元は入院病床98床の旧登米町の拠点病院。合併後の08年に無床化され診療所となった。それだけに今回の休診に対する地域の反発は強い。
 旧登米町地域から6月下旬、「診療継続を求める陳情書」が地域住民の3分の2に当たる3374人分の署名を添えて市に提出された。取りまとめた登米地区町内会振興協議会の佐々木康明会長(71)は「明治から続く登米病院が診療所となり今度は休診。住民の多くは悲哀を感じている」と語る。
 始まったばかりの患者送迎バスの運行は、利用者の低迷で10月末に打ち切られることになった。
 佐々木さんは「医師が来る環境を整えることが最善の方法。市は10年以上、医療改革を進めてきたと言っているが、根本的な改革がなされていないのではないか」と苦言を呈する。


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2018年10月13日土曜日


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